オーラル・ヒストリー (oral history) とは、人々の生きてきた人生を直接聞き取り、記録としてまとめたものです。こうした記録をアーカイブスにして一般に公開することは、歴史的に重要であるだけでなく、今を生きている私たち自身にとっても意味があり、次世代への大きな励ましにもなると思います。
海外では、様々なジャンルでオーラル・ヒストリーのプロジェクトがあります。例えば、ミネソタ大学のThe Tretter Transgender Oral History Projectは、180人のトランスジェンダー活動家へのインタビューを公開しており、人数にもインタビュー時間にも圧倒されます。
LGBTQのオーラルヒストリーアーカイブスは、日本にはまだあまりありません。 長年、インタビュー調査をしてきた鶴田幸恵さんは「Trans+の人びとにインタビューして論文を書くのに、匿名でしかインタビューを紹介できないのだとしたら、それは搾取ではないのか?」「自分が記録した生データは、死んだあとどうなるのか?」といった疑問を持ってきました。トランス当事者の貴重な証言を、自分しか見られないお蔵入りデータにしておくのではなく、公の財産にしたい、という想いから現在、鶴田さんはカナダのビクトリア大学にて「Trans+ Identity Words Project」を実施されており、日本でも「LGBTQ+ Oral History Archive Project」に取り組んでいます。
そこでぶつかる大きな壁として、インタビューされる人たちを守るための「倫理申請」があります。この分科会では、鶴田さんにこうした試みについて、日本とカナダの状況を比較しながらお話頂きます。
日本でのアーカイブスの実現には、どのようなことが必要なのかも、共に考えていけたらと思います。
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