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インクルーシブな性教育
~児童養護施設の児童、障害のある児童への実践~

報告文「インクルーシブな性教育~児童養護施設の児童、障害のある児童への実践~」

この分科会では、講師に徳永桂子さんをお招きし、性教育が難しいと思われている社会的養護の現場や障害のある子どもを対象にどのように性を伝えるか、そしてLGBTQなどのセクシュアルマイノリティについても言及するようなインクルーシブな性教育の実践について伺った。最初に生徒向けにどのように話していくかの実演動画をはさみ、具体的な様子を視聴して、手作りの教材や話題の展開の工夫などについて伺った。続いて、徳永さんが性教育に取り組んでいくことになった経緯なども詳しく伺うことで、現在の取り組みの背景を知ることができた。活動の基盤になったというCAPの取り組みと理念についてもその歴史的背景からお話下さり、1980年代からセクシュアルマイノリティを包括したプログラムであることがわかった。同時から混同されがちであった同性間の性暴力と、セクシュアリティは別であることをCAPで明確にされていたことは、LGBTQに関する誤った考えを助長させないためにも非常に重要だ。性暴力は、力関係と恥などを利用した暴力であり、性行為とは全く違うものであることを丁寧に解説頂いた。

そして、実際に知的障害などのある子どもたちや、児童養護施設に暮らす子どもたちに対して性教育を行う際の注意点や気を付けていること、現場のやり取りなどもお話頂いたことで参加者も具体的に想像することができた。また、バウンダリー(境界線)を子どもたちに教えることが性教育にも深く関わっているとのことだった。生まれた時から、子どもに触る時に子どもの許可を得るようにすることで、本人が大事にされていることと、他者との境界を学ぶことで、自分の身を守り、大切にすることができるという。
徳永さんは講演だけでなく、個別相談の時間を設けたり、非営利団体での相談業務についても呼び掛けるなど、事後のフォローアップの活動もされている。このことは子どもたちや関係者の安心感にもつながっていると感じた。最後に書籍の活用についてもお話頂き、性教育関係の良書をこのページに紹介している。

今回のお話は、性教育に携わるすべての人に聞いてもらいたい非常に重要なポイントがぎゅっと詰まった内容になっていた。セクシュアルマイノリティ当事者や現場からのフィードバックを大切にして、ブラッシュアップされてきた説得力のある実践に多くを学ばせて頂いた。性教育を受ける権利はすべての子どもたちにある。その性教育は、誰もが自分のことも含まれていると感じられる内容であるべきだ。徳永さんのようなインクルーシブな性教育を多くの人に実践してもらいたい。

【参加者の感想】
 

  • 学びが深まりました。バウンダリーの実践はまず大人からだと私も改めて思いました。

  • 子ども(=大人)を人として大切にするということがどういうことなのかを具体的に教えていただきました。特に境界線、一人のスペースの保障をどう確保するかの実践はこれを学ぶ人の一生を決定すると思いました。たいへん貴重な学びとなりました。ありがとうございました!

  • 普段、学校現場で働いています。実際の教育現場での実践を動画で観ながら、お話を聞くことができたのでとてもよかったです。また、困っている子どもたちがヘルプを出せたり、話をしたい時に話ができるきっかけを設定されていることが非常に重要だなと思いました。

  • 介護のボランティアに参加していて、同性愛者が介護に入ることはどうなのか?という議論を以前に聞いたことがありますが、性暴力と性行動は全く切り離して考えることの大切さについてのお話を聞けてよかったです。

  • 子どもと関わる立場の人間として、ハグなど身体接触を求めている子どもであっても、「ハグしてもいい?」とか言葉で聞くことが、あなたの体は、あなただけの大切な体というメッセージを伝えることができるということをきき、自分の普段の行動を振り返るきっかけにもなりました。性教育の授業をするということだけが、性教育だけではなく、日頃からの声かけや関わりから、子どもたちに伝えていくことができるのだなと思いました。

  • 徳永さんのお話はお何度も聞きましたが、毎回今後に役立つ気づきをいただけます。

2022年2月5日(土)
10:30~12:00

セクシュアリティ関係のゲストスピーカー、ファシリテーター、講師業、学校の先生、性関連の相談事業、障害者、児童福祉関係のお仕事をされている方に是非聞いてもらいたい分科会です。性教育を行う上で、相談や支援をする中で、困った経験などがあれば、ぜひ交流会で徳永さんに質問してみて下さい。LGBTQコミュニティを障害のある人や様々な背景を持った人を含めた、インクルーシブな場所にしたいと考えているオーガナイザーも必見です。

障害のある子どもやおとなの学校や事業所、入所施設、また児童養護施設、心理治療施設、母子生活支援施設など、年間60か所以上訪問して研修をされている徳永さんの知識と経験から多くのヒントをもらえます。

登壇者

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徳永桂子

・思春期保健相談士。神戸大学理学部、神戸大学大学院総合人間科学研究科(発達支援論講座 修士)卒業。性教育、CAP、HIV/AIDS予防啓発、デートDV防止、びーらぶなど、「性・子ども・暴力防止」をキーワードに人権擁護活動をしている。

単著『からだノート~中学生の相談箱』(大月書店)、
『ココロ♡カラダ不思議つながり』  絵:上原明子 (琉球新報社)
共著『LGBT なんでも聞いてみよう~中高生が知りたいホントのところ』(子どもの未来社)
『季刊セクシュアリティ』No.90 特集「障害のある人たちの包括的セクシュアリティ教育」
 『なくそう!スクール・セクハラ~教師のためのワークショップ』(かもがわブックレット)など 


徳永さんについての記事

「いちばん大切なのはあなた自身なの」“3歳からの性教育”を通して子どもの自尊感情を育む徳永桂子さん

親子で正しい性教育 徳永桂子さん 那覇で講演

性教育「正しい情報で学んで」 徳永さん、出版記念講演

障がいのある子どもへの性教育を含め、幼保~大学までの各学校、助産学科などの専門学校、入所施設や各地の男女共同参画センターなどで数々の性教育ワークショップを行っていらっしゃる性教育のスペシャリスト、徳永桂子さんから現場で役立つ知識と工夫を伺います。
下記のことを大事にされながら、徳永さんは性教育をされています。
・性教育を科学・安全・健康の視点で捉える。
・自分の身体についての正しい知識が自尊感情を育て、性被害を防ぐことにつながる。
・性の話を生活の場を中心に3歳頃から始めよう。
・性の健康教育を受ける事はすべての子どもの人権である。
今回は特に、児童養護施設、障害児(知的障害、発達障害のある児童生徒)を対象としたとき、どのようにインクルーシブな性教育を行っておられるかをお聞きします。

(質問をいくつか紹介)
Q.LGBTQを疎外しないように、どのような伝え方の工夫をしていますか。
Q.障害児には性教育や性の多様性は理解できないという意見はありませんでしたか。
Q.知的障害や自閉症などの子が性別違和を訴えている場合、セクシュアリティのことなのか、別の理由からなのか判別が困難ではないでしょうか。
Q.児童養護施設で、LGBTQの子どもたちがいる場合の相談には、どのようなものがありますか。
Q.児童養護施設で、子ども同士での同性への性暴力があると聞きますがLGBTQなのでしょうか。
Q.性教育と同時に、境界線(boundary)の話もするそうですが性教育との関係について教えて下さい。




参照サイト(分科会内で説明があります)

ハートブレイク 教材販売
あしの会
CAPにしのみや
Meg Hickling
三光事業団のとりくみ
CAP JAPAN
障がいのある子どもたちへのプログラム
人間と性教育研究協議会
障害児・者サークル
LGBTなんでも聞いてみよう
chotCAST - 大阪検査相談・啓発・支援センター
​日本性分化疾患患者家族会連絡会 ネクスDSDジャパン
 

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聞き手:塩安九十九
徳永さんとはQWRCつながりだったか、SOGIと○○を考えるプロジェクトだったか忘れたけどそれをきっかけに、教材制作にも参戦してくださり、「いろんな家族」では入所施設の子どもたちのシーンで現場の状況を教えてくださり大変勉強になりました。⑧も徳永さんの性教育をベースに作成中。日本全国を飛び回るフットワークの軽さ、常に新しい知識をアップデートする勤勉さや好奇心、研修先との丁寧なやり取りや執筆活動などなど、見習いたいことばかり。カナダで暮した時に、右も左もわからない私をすごく世話してくれた人のうちのひとりが知的障害のあるゲイの青年でした。ほかにも、車いすユーザーや、ろう者、難民、シェルター暮らしの人など、様々な人たちがLGBTQコミュニティに自然に居る、それ当たり前、という環境は、日本国籍で健常者ばかりの環境で育った私には新鮮でした。LGBTQコミュニティに限らず、日本の様々な場面がまだまだいろんな意味でインクルーシブになっていないことを感じています。

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