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トランスジェンダー生徒交流会16年の歩み
報告文「トランスジェンダー生徒交流会16年の歩み」
この分科会では、トランスジェンダー生徒交流会の関係者にインタビューした動画60分を上映し、交流会主催者の土肥いつきさんに質疑応答でご登壇いただいた。
動画では、小学生の頃から生徒交流会に参加しており、現在は大学生となっている2人の当事者に当時の様子や自分の変化について語ってもらった。交流会を通じて様々な人と出会い、自分の性別のあり方についても見つめながら、友達とともに成長してきた過程は、かけがえのないものであり、交流会が大切なひとつの拠り所となっていることが伺えた。そして交流会を経て自分の人生を切り開いていく力を養った、逞しさや、自身へのプライドを持った生き方を身に付けていることに深く感動させられた。
トランスジェンダー当事者に限らず、交流会には様々な立場の人が参加しているが、その中の若い参加者にも話を伺った。思春期の葛藤の中で交流会に来ることができ、大切と思える人たちに出会ったことは人生に大きな影響を与えているとのことだった。
交流会がはじまった当時、高校生で今は大人として交流会の運営に携わっている当事者からは、当時の様子や交流会で得られた支援や知識、居場所の大切さについて語られた。トランスとして、一般社会で生きていくためのレジリエンスを養った場所でもあったという。
後半のインタビューは、交流会の主催者である土肥いつきさんと、土肥さんといっしょに交流会を運営している精神科医の康純さんとの対談だ。精神科医としての立場からどのように交流会に関わっているか、気を付けている点や子どもたちや親の変化から学んでいることなど話題は多岐にわたった。医療だけでは提供できない、社会で生きる底力を与えるピアのパワーには目を見張るものがあると言う。また、もともとは中高生向けだった交流会には、現在未就学児など低年齢の子どもたちも多くなってきている。現に小学校で希望の性別で暮らす生徒も増えている。土肥さんの中でも、小さい子たちやその親たちにとっても来てよかったと思える場にしていこうと意識が変わっていったという。しかし学校関係者に対して、ただその子が普通に、当たり前に学校生活が送れるように対応すれば良いだけのことが、なぜ理解できないのか、という苛立ちもまだまだ感じるそうだ。
この交流会という場に子どもたちが卒業してからも戻ってくるということが、まさに自分のままでいられる居場所として多くの人にかけがえのない場所として認識され活用されている証である。このような居場所づくりの取組が全国に広がっていけば、各地のトランスジェンダーの子どもたちがシスジェンダーの子どもと同じ様に健やかに成長していける助けになるのではないだろうか。私たちには、幼い頃から自分が自分であることを励ましてくれる周囲の大人や、仲間が必要だ。自分のまま生きて行って良いのだと、自らの在り方に自信と誇りを持って生きていける方が楽だ。インタビューでは、生徒たちが何を得て逞しく生きていけているか、場がどのように有機的に運営されているかなど、実践的なヒントがたくさんちりばめられていた。
土肥さんの夢は、いつの日か開催されてほしい、「全国」トランスジェンダー生徒交流会で集まった生徒たちを見ながら酒を飲むことだ。夢が叶う日が来ますように。
2022年2月4日(金)
16:30~18:00
日本で他になかなか類を見ないこの長期的な取り組みから、私たちは様々なことを学ぶことができると思います。また、マクロ的に見るとこうした貴重な取り組みを記録に残していくことは次世代への遺産にもなります。人の集まり(コミュニティ)が歴史を持っていることは、私たちの生き方に深く関与し、アイデンティティを支えます。ミクロ的に見ると、先輩が学校を生き抜いた軌跡は、ダイレクトにユースの日常を変えます。また、トランスであることに正面から向き合うことを助け、各々を生きやすい方向へ導くのではないでしょうか。このようなトランスの生徒児童をサポートする場所が全国に広がることを願っています。
登壇者
土肥いつき
京都府立高校教員。
変態が集まる「玖伊屋」(くいや)のスタッフとして2ヶ月に1回京都駅南側で夜通しの宴会をしている。また、2006年よりトランスジェンダー生徒交流会の活動を開始した。同年、通院しているジェンダークリニックの待合室のクラさに閉口して受診者をはじめた。土日平日問わず、各所に出没している。
さらに2012年に大学院に入院、2021年に博士号をとってしまった。
「トランスジェンダー生徒交流会」は、今年で16年目を迎えます。主に性別違和のある子どもたちが集まり交流する場として、2006年に土肥いつきさんが立ち上げました。交流会では、子どもたちがそれぞれの葛藤や悩みを分かち合い、時にぶつけ合い、学校と言うシステムを生き抜くために仲間同士支え合っています。また、親たちのピアサポートや情報交換の場にもなっています。
この分科会では、交流会を運営してきた土肥さんや支援者、小学校の頃から交流会に参加してきた生徒(現在は大学生)、卒業生、参加者などにもインタビューし、これまでの経験やこの場所への想いを語ってもらった動画を上映します。その後、質疑応答には土肥いつきさんにお答え頂きます。
着たい制服を着るための交渉、望みの性別で日々過ごすための調整、複雑な人間関係などなど、本当に学校生活は大変です。しかし、安心して紆余曲折できる場所があり、迷っていいんだと受容され、ピアの中でも多様な違いに晒されながら、自分というもの持つこと。そうした過程を経ながら、生徒たちは自分のために戦えるようになっていくのではないでしょうか。参加者たちがこの会をかけがえのない場所だと言う言葉には、説得力があります。また長年、教員として部落や在日コリアンの問題に取り組んできた土肥さんならではの交流会の在り方が見えてきます。
【参考資料】
第22回GID学会 トランスジェンダー生徒交流会からの発信
「Coming Out Story」(2012)土肥いつきさんを追ったドキュメンタリー
ありのままの自分?そんなものありません。
トランスジェンダーの教員が子どもたちに伝えたいこと
トランスジェンダー生徒交流会が報道された番組
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