top of page
誰もが安心して医療サービスにアクセスできる社会を目指して
~にじいろドクターズからの発信~
報告文【誰もが安心して医療サービスにアクセスできる社会を目指して ~にじいろドクターズからの発信~】
本分科会では、LGBTQの人々が抱える健康問題や医療にアクセスする際に起こる困りごと、それを解決していくために虹色ドクターズが行っている活動について伺いました。
講師の吉田医師は総合診療医として病院で勤務する傍ら、東京慈恵会医科大学でLGBTQと医学教育に関する研究をされています。また、ご自身がバイセクシュアルかつ X ジェンダーの当事者でもあります。今回はご自身の体験も踏まえながら、医療の歴史や社会の流れの中で、いかにLGBTQたちが影響をうけ、それが健康問題へと繋がっていくのかについてお話くださいました。
同性愛やトランスジェンダーが犯罪や疾患、障害として扱われてきた歴史の中で、当事者はスティグマを抱えることになります。近年では脱病理化が進んでいますが、世界には未だLGBTQが懲罰の対象となる地域も存在します。慢性的なマイノリティストレスに晒されたLGBTQ当事者は、うつや不安症、自殺のリスクが高く、アルコールや薬物乱用の末に身体的な健康問題に発展することもあります。現状においてLGBTQであることは健康問題を抱えるリスクが高いということが分かりました。
さらに、実際に健康問題を抱えたLGBTQ当事者が医療にアクセスすると不快な経験をすることが少なくありません。具体的には、トランスジェンダーの方の呼称や身体検査への配慮のなさ、パートナーが家族として扱われないこと、医療者にカミングアウトしたら説教された、などが挙げられました。これは医療機関が男女二元論や異性愛主義を前提とした診療態度が理由として考えられます。
一方で、日本看護協会や医学教育で性的指向や性自認への配慮が明文化されてきています。にじいろドクターズは医療者を対象とした教科書的な書籍の出版や、医学会や学校等での講演やワークショップなど、医療者がLGBTQへ適切な対応ができるよう、啓発活動に力を入れています。実際に臨床現場が変化していくには時間がかかるかもしれませんが、医療者も当事者も互いに連携して、誰もが安心して医療にアクセスすることができる未来に向かって共に考えることができる分科会となりました。
【感想】
-
私も医療従事者なのでこのセッションを楽しみにしていました。また、医師である夫にも一緒に見てもらえたことをとてもうれしく思います。私は普段学校で性の多様性について話をすることがありますが、自分の働いている職場ではなかなか行動ができずにいます。それはお話にもあった、医師に物言えない環境にあります。スタッフ間もあまりいい関係とは言えず…。今後医療機関に性の多様性についての学べる機会が増える事を願っています。
-
登壇者のストーリーが聞けるのは貴重な機会だと思いました。社会的背景や健康格差をどうにかするには、大きなことですが、社会システム変えないと、というところに賛同します。できることとして医療現場、教育の面でも変えていくことはまだできるのかなと思いました。
2022年2月6日(日)
13:30~15:00
登壇者
吉田絵理子
一般社団法人 にじいろドクターズ 理事
川崎協同病院 総合診療科 科長
東京慈恵会医科大学 臨床疫学部 研究生
医師として病院勤務をしながら、LGBTQと医学教育に関する研究を行っている。2018年にはLGBTQ当事者であることをカミングアウトし、主に医療関係者を対象にLGBTQの人々のケアに関する講演活動やワークショップ等を開始した。2021年にはプライマリ・ケアに携わる医師の仲間で一般社団法人にじいろドクターズを立ち上げ、すべてのセクシュアリティの人が医療機関に安心して受診でき、適切な医療を受けられることを目指して活動している。
本分科会では、プライマリ・ケアに携わる医師5人で組織された「一般社団法人にじいろドクターズ」を招き、LGBTQの人々のケアに関する医療界の現状の課題と、にじいろドクターズの活動について報告いただきます。
日本においては医療者が多様なセクシュアリティについて学ぶ機会が十分に提供されているとは言い難く、医療者の不適切な対応がLGBTQの人々の医療アクセスを妨げてしまい、健康格差を助長してしまうこともあります。
分科会では、LGBTQ当事者であり医師でもある講師が、性の多様性に関する基礎的な知識に加え、エビデンスに基づいたLGBTQの人々が晒されている健康格差について説明します。さらに、にじいろドクターズによる医療者向けの講演活動やワークショップの開催、医療者向けの書籍の作成、当事者の医療者へのピアサポートの場の提供といった活動内容を紹介します。
日本の医療界の現状や課題を共有し、どこにおいてもすべてのセクシュアリティの人々が安心して医療機関に受診できるために、医療界がどのように変わっていく必要があるか、そのためにどのような事ができるかについて考察します。
bottom of page