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教員21,634人のLGBTs意識調査レポート

報告文「教員21,634人のLGBTs意識調査レポート」

 この分科会では、宝塚大学看護学部教授の日高庸晴さんに2019年の調査結果をまとめたリーフレット「子どもの“人生を変える”言葉があります 2021」をベースにご報告頂いた。
 教員対象には2011年にも調査を行われていたため、その当時の結果と比べながら社会状況や教育現場の変化についても解説頂いたが、当時はまだまだLGBTsへ偏見が強く、こうした事柄に関する調査をすること自体に理解が得られず大変だったそうだ。当時、批判にさらされながらも6000人の教員の方々から協力を得られたことを考えると、今回の2万人を超える調査ができたことは社会や世論の変化を感じられる。その変化は、まさに2011年の調査が、教育現場で啓発を広める根拠になったり、各地の議会で使われたり、衆議院予算委員会でも話題になったり、政治の世界でも取り組みを進めるための根拠として使われたことから、起こすことができた変化である。
 しかし、LGBTsの存在が可視化されてきたとは言え、その内訳には偏りがあることが指摘された。「LGBTsの児童生徒と実際に関わったことがありますか?」という質問では、性別違和や性同一性障害については11.9%(2011年)から20.2%(2019年)と倍増しているのに対し、同性愛については7.5%(2011年)から9%(2019年)と増加はとても少ない。人口比からするとLGBはトランスジェンダーの何倍にもなることから、LGBの児童生徒のカミングアウトのしにくさが推察できる。このことは「同性愛について冗談や笑いのネタ等にする児童生徒がいた(する側)」が36.3%である一方、「同性愛について冗談や笑いのネタ等にされている児童生徒がいた(される側)」が17.5%と不均等であることからも伺える。教員がLGBTsに関する知識不足であるために、当事者が傷つく言動自体に気づかない、教室に居辛くなる生徒の状況を理解していないとも考えられる。こうした結果からわかるように、さらなる教育現場での啓発や実践が求められる。
 質疑応答ではたくさんの質問が寄せられ、学校や行政関係者の参加が多い印象であった。教員過程のある大学機関での教育の必要性や、現場の教員の危機意識をどのように共有していくかなど多岐にわたる話題となり、参加者の関心の高さが伺えた。
 この分科会を企画した意図は、LGBTsについて取り扱う学校も増えてきたり、学校でカミングアウトする当事者も見受けられる中で、教員が適切な知識と態度を身に付けて対応していくことが益々重要になってきているからである。学校関係者がこのような調査結果をどんどん活用して現場を変えていってくれることを願うと同時に、この大会のような機会を通じてLGBTQコミュニティとの協力関係や連携を作っていってほしい。

【参加者の感想】

  • 調査結果を知ることができた。同性愛についての認識があまり変わっていないことが残念だった。

  • リーフレットぜひ活用させていただきます。

  • 何度かお聞きしている日高先生のお話ですが、聞くたびに発見がありまたパワーをもらえます。DVDも欲しいな~と思いながら、なかなかですが、図書館に購入希望出してみます!

  • 貴重な大規模データのお話が聞くことができ、大変ありがたかったです。結果の内容としては、結局は教員養成のカリキュラムも、義務教育のカリキュラムにも含まれていないことから、あまり知識の普及がしていないことを感じました。一番の収穫は、質問にご回答していただけたことで、学校対応でのキーが「危機感の共有」だとわかったことです。確かに、いじめにしても不登校にしても、危機感が共有できない事例では、学校にまとまりがなくなっていたことを思い出しました。そのことを糸口に先生方にお話すれば、伝わりやすくなるのかもしれないと感じました。今回はどうもありがとうございました。

  • 実は、新しいほうの調査がされていることを知りませんでした。この講座を機に知っただけでも、自分にとっては大きかったです。パンフの内容を読めばわかるところも多かったですが、やはり直接言葉で聞くと印象に残り、聞いてよかったと思いました。また、質疑応答まであり、とても参考になりました。データがちゃんとあることはとても重要であり、調査者の方から話を聞ける機会があるのはとてもありがたかったです。日高さん、調査を続けてくださり、ありがとうございます。

  • リーレットを読むだけではわからなかった背景を伺うことができて、とても勉強になりました。何よりも、大規模な調査を設計・実行されるのは、とても大変だったと思います。リーフレットを活用させていただきます。日高さん、ありがとうございました。他、医療関連との比較も大変興味深かったです。

2022年1月29日(土)
16:30~18:00

最近では、LGBTQの児童生徒がカムアウトする例もよく聞くようになってきました。子どもたちはメディアやSNSなどで情報を得て、大人たちよりよっぽどLGBTQを理解しており、偏見が少ない世代になってきています。そんな中、大人たちはどうでしょうか?世代間ギャップが広がる中で、教育関係者の課題は何なのでしょうか?教育に関わる全ての人に参加して頂きたい分科会です。

登壇者

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日高 庸晴

宝塚大学看護学部 教授、日本思春期学会 理事、厚生労働省エイズ動向委員会 委員

京都大学大学院医学研究科で博士号(社会健康医学)取得。カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部エイズ予防研究センター研究員、公益財団法人エイズ予防財団リサーチレジデントなどを経て現職。
法務省企画の人権啓発ビデオの監修や、文部科学省が2016年4月に発表した性的指向と性自認に関する教職員向け資料の作成協力、性的指向や性自認の多様性に関する文部科学省幹部職員研修、法務省国家公務員人権研修、人事院ハラスメント研修などの講師を務める。監修したDVD教材「LGBTsの子どもの命を守る学校の取組 当事者に寄り添うために~教育現場での落とし穴」は文科省特選を受賞、 NHK「ハートネット」「視点・論点」など新聞やテレビなどマスコミ出演多数。
https://www.health-issue.jp/

この分科会では、2019年度に行われた21,634人の教員のLGBTsに関する意識調査の結果を宝塚大学の日高庸晴教授に報告して頂きます。
LGBTという言葉が普及し、教育現場でも多様性やインクルージョンが求められが叫ばれ、セクシュアルマイノリティについての学習機会も増えてきたようです。しかし、だからと言って正しい知識が普及しているとは限りません。例えば「同性愛になるか異性愛になるか、本人の選択によるものだと思いますか?」という質問について、「そう思う」と答えている教員は46.9%にものぼります。それもそのはず、同性愛について出身養成機関で学んだことがある教員は、たったの12.4%という現状なのです。日高教授が2011年に行った教員の意識調査の結果とも比較しながら、この間に変化しているところ、変化していないところもご報告頂きます。
誰もが過ごしやすい学校にするために、どのような改善が必要なのでしょうか。国内最大規模の教員を対象にした調査結果から見えてくる学校の現状について解説して頂きながら、今、やるべきことを一緒に考えて行きましょう。皆さんはこれから10年後、どんな学校になっていることを望みますか?
当日は、調査結果をまとめたリーフレット「子どもの“人生を変える”言葉があります 2021」が主な資料となります。プリントアウトして職場や学校でも是非ご活用下さい。


■参考教材
映像教材
レインボーストーリーズ LGBTsと社会(DVD全4巻)(2022)
レインボーストーリーズ LGBTsと医療(DVD全2巻)(2022)
LGBTsの子どもの命を守る学校の取組(DVD全2巻)(2020)
「はじめて学ぶLGBTs」(DVD全2巻)(2019)
「みんなで考えるLGBTs」(DVD全3巻)(2018)
「あなたが あなたらしく生きるために」平成26年度 法務省委託人権啓発ビデオ(2014)

書籍
「パワポ LGBTQをはじめとするセクシュアルマイノリティ授業」(2019)
「レインボーフラッグ誕生物語」(2018)
「もっと知りたい!話したい!セクシュアルマイノリティ」(全3巻)(2016)

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