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性的マイノリティと高齢期「支援」〜情報と人のネットワークを求めて

2022年1月30日(日)
16:30~18:00

※この日(1/30)はライブビューイングはありません。

「性的マイノリティの老後を考え、つながるNPO」として、高齢期をテーマとした活動をする当会は、どういう理念を掲げ、どういう思考と実践を重ねたか。「うちは支援団体ではない」という当会が、支援するまえに支援のいらない人をどう増やすか、当事者/支援者の立場でできることを考えたい。

報告文「性的マイノリティと高齢期支援」

この分科会では、パープル・ハンズ事務局長の永易至文さんにご講演頂いた。
1990年代のゲイブームからの歴史をざっと紹介する中で、ゲイ一期生として生きて来きた人々が今高齢期に入ってきていること、法律のない同性カップルは様々な面で不便であったり、シングルの人も不安を抱えている人もいるとのことだった。セクマイが病気をする時、医療が受けられなかったり、バートナーに寄り添えなかったりする。セクマイが死ぬ時、パートナーとの財産を相続できなかったり、葬儀に立ち会えなかったりする。HIV陽性、孤立、認知障害などなど、若い頃は華やかに暮らしていた人も老後の現実は厳しい場合もあるそうだ。
そうした中で、老後を生きるノウハウを求めてパープルハンズは活動を続けてきており、様々な実践をしていらっしゃる。老後を見越したつながり作り、同性パートナーシップのための情報提供、講座、冊子発行などなど、「制度リテラシー」を身につけ、「教育」による当事者エンパワーメントによって、地に足のついた暮らしができる当事者を増やす活動を展開しておられる。中でも、「お金の学び」は非常に重要で、生計を立てて行く見通しを立てられること、その「お金の相談」に乗れる支援者が今求められているようだ。
 そこで、堅実なお金の知識、結婚制度外で暮らす知恵、地域でつながる生き方などにフォーカスした「セクマイ×老後あんしん講座」という連続講座などを企画したり、高齢者向け住宅や墓地の見学ツアーなども行っているとのことだった。そのような場では、制度を使う勇気を得ると同時に、納税者意識、主権者意識を高め、仲間との支え合いの中で「自分は幸せになってよいのだ」という自尊感情を育むことができるという。
質疑応答は、司会を務めたソーシャルワーカーの岡本学さんとの対談のような形で進み、大変聞きごたえのある内容であった。介護や相続の問題は付き合っている二人だけの問題ではなく、血縁家族にも関わってくることであり、クローゼットの状態からの互いの家族との関係作りの難しさ、最近関心が高まるLGBTQ向け老人ホームだが、一人暮らししかしたことがない人が本当に他人と暮らせるのか、などなど参加者からの質問に現実的な観点からお応え頂き、大変参考になるお話が満載であった。

 

【参加者の感想】

  • パープルハンズさんのリーフレットはとてもクオリティが高くだいぶ前からダウンロードして参考にさせてもらっていました。今日は直接お話を聞くことができてとてもうれしかったです。行政書士さんという立場からの関わりとても勉強になりました。また、老人ホームに関してもなるほど!でした。そんなふうに特化しなくても当たり前に認められる社会になってほしいですよね。貴重なお話ありがとうございました。

  • リアルに考えること。そのために人と会うことが大切であると感じました。

  • ありがたいです。参加出来て良かったです。

  • 宙ぶらりんのまま、答えを出さずに生きていけるためには、そのようなことを考えている人とつながることが一番なんだと思いました。

登壇者

永易さん.jpg

永易至文(ながやす・しぶん)

NPO法人パープル・ハンズ事務局長、行政書士

1966年、愛媛県生まれ。1980年代末からゲイのコミュニティ活動にかかわる。出版社勤務をへて、2000年代以後、ライター/編集者として性的マイノリティの暮らしや老後、HIV問題を取材・執筆。高邁な理想論を追うよりも、いまできることを具体的に、が持ち味。2013年に行政書士登録、東中野さくら行政書士事務所開設。同年、特定非営利活動法人パープル・ハンズ設立、同事務局長。著書に『ふたりで安心して最後まで暮らすための本』『にじ色ライフプランニング入門』ほか。

「性的マイノリティの老後を考え、つながるNPO」「老後と同性パートナーシップの確かな情報センター」として活動する当会は、自身を「支援団体」と位置付けない。暮らしと老後に必要な情報を得る「学びの場」であり、大人になるまでに知りそこねた堅実なお金の知識や法制度を学ぶ「ライフプランの夜間中学」、マイノリティの視点で制度へのリテラシーを高める「セクマイの識字教育」と名乗っている。
ここはあなたの「居場所」ではない。学んだら、早くここを巣立ってほしい。だって生きていくのはあなた自身なのだから----そう参加者に呼びかけている。弊会などが「支援」しなくても、みんな生きていく力を内奥に蓄えているから。本当は生きたいという思いを持っているから。ただ情報が足りないだけ。
そうやってみんなが自分で自分を幸せにできれば、社会から不幸な人はいなくなり、「生きづらさ」は消滅する……。
現行法と制度の活用で、どこまでそれが可能か。それでもなお「とりこぼされる人」は誰か。自立と、自助と、支援と、学びを、「セクマイの老い」というフィールドで、それでも支援をしたい人たちとともに考えてみたいと思う。

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