トランスジェンダーへのヘイトに対抗するために
報告文「トランスジェンダーへのヘイトに対抗するために」
この分科会では、昨今SNSで吹き荒れているトランスジェンダー(主にトランス女性)へのヘイトについて、どのような言説が吹聴されており、どのような考え方が広まってきているのか、そしてその背景には何があるのかについて遠藤まめたさんに解説して頂いた。
まず、ヘイター(ここではトランスジェンダーを攻撃する人々)の主張や論理展開などの様々な言説のパターンをご紹介くださり、SNSで起きていることを知ることができた。ヘイターは、トランスジェンダーと女性の権利があたかも対立しているかのような言説を女性の安全や人権を守るためという名目で掲げる傾向がある。言うまでもなく、それらの権利は対立するものではない、ということを私たちはしっかり理解しなければならないと感じた。そのような言論のパターンや拡散されやすい言説を理解し、惑わされることなくヘイターの論理がおかしいと反論できるだけの人権感覚とトランスジェンダーへの理解が必要だ。
そして、このようなバックラッシュの背景には何があるのか、日本の一連の出来事を年表で確認し、国際的な動きも動画を交えて簡潔に解説して頂いた。主にこの流れは英国からの輸入であること、世界的な右傾化の広がりの中で起こっていること、日本でも同調した動きが見られることなど、現状を理解する上で非常に重要なお話だった。また、保守的な勢力を背景に、あるいは宗教勢力として政治的意図をもって「不安」を煽る人と、無知や偏見のためにそれに煽られトランスを排除に加わる人たちとでは、分けて対策が必要とのことだった。
印象的なエピソードは、トランス排除をしていた人が、トランスジェンダーが差別によって死に追いやられたことを知ったことで自分の間違いに気づき、ヘイト行為をやめることができたという話だ。現在、様々な不安を煽る社会環境になっている。誰かを悪者にしたてあげたい罠がたくさん張り巡らされている中で、誰もがヘイターになりかねない。その「不安」を解消するには、真実を確かめるファクトチェック、そして当事者や家族のリアルな姿を見せていくことが大事だと遠藤さんは呼び掛けた。その実践として、トランスジェンダー映画祭や「トランスジェンダーのリアル」というリーフレットの発行配布などの活動を展開している。
分科会後は「トランスヘイトに対抗する人々の集い」と題してZOOM交流会を行い、トランスヘイトに対抗するためにはどのような対策や連携をしていくと良いかについて、知恵や情報を共有した。多くの方が参加し、様々な意見交換が行われ非常に有意義な時間となった。
【集いで出た対策案、メッセージ】
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就活のとき「らしさ」を求められる。まずそういった社会であることを認識する。
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大学生の多くはあからさまなヘイトに(する側でもされる側でも)遭ったという経験が少なく、ヘイトへの対抗という視点だと日常感覚から距離があるので、たとえば「結婚するさい極めてプライベートなものであるはずの性関係を、婚姻届というかたちで役所に届けるのは何のためか」といったざっくりした問から、戸籍制度、家族制度について考えてもらう中で「多様な性関係」にも目を向けてもらうような取組みを考える。
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ヘイトに直接的に、あった経験は無いです。しかし様々なマイノリティが連帯して対抗していくのが良いと考えます。あらゆる差別は、つながっていると思う。マイノリティを対立させる構造があると考えられる。マイノリティ同士が対立しないことが良いと思う。 広くお互いを知って連携をしていくのが良いと考えます。
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企業はお金にならないことしかしない。どうしたら・・・
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セクマイ全国大会で企業に関係のないことを伝え続ける 企業内で伝える リアルを伝える(当事者に伝えるコストを負わせるのは問題だが)
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大学などの教養課程で、ジェンダーなどの課題を取り上げる。『いわゆる人権課題』が関係ない仕事や社会や日常生活って実はない、つながっている、ということに気づいてほしい。
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シスターフッドより、マージナルな人々の課題解決がフェミニズムとつながるか
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ラディカルなまま止まってるフェミニストも・・・
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学校や役所で性別欄があるのが厳しい。
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SNSは悪をばら撒くにも自分の意見を伝えるにも使える
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SNSは教育機能が低いから、関心のない層にどうやって届けるか?
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伝え方の勉強
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レストランにレインボーフラッグシールを貼る 好きなところを使っていいアピール。
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地道でもいろんなところで知ってもらう
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非典型的な性の在り方に対して、批判したり、嘲笑したりしない。それをしている場面に立ち会った場合「それっておかしい」と言えるようになる。
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怖がらずに活動し続けましょう。マイノリティ同士つながりましょう。
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インターセクショナリティについて伝える
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インターセクショナリティと連帯を伝える
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問題意識の共有と連帯
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冊子「トランスのリアル」を地元の催しなどで配布する。
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「トランスジェンダーのリアルなところ」を伝える機会をいっぱい作る。
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講演で触れられた「トランスジェンダーのリアル」冊子制作チームが、応援用チラシを無料で配布しているので、それを印刷して持ち歩き、何かあったら手渡せるようにしておく。
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https://twitter.com/tgbooklet/status/1476153800092426242?s=21
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トランスジェンダー映画の上映会。
【参加者の感想】
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遠藤さんの講義のみ視聴させていただきましたので、実際面であらたなつながりを構築できたわけではなく、いろいろと参考になる動画や、事例のご紹介によって、今後学んでいくつながりが持てました。
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これまでの歴史や海外の状況などを話して頂けてとてもありがたかったです。キーワードを示して頂けて、詳細は自分で検索できるので良かったです。遠藤さんなりのヘイターの分析や対抗の仕方もとても参考になりました。ありがとうございました。
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やっぱり私たちは、自分の立ち位置でできることをあきらめずにやり続けることだと思いました。心から応援していることを伝えたいです!私はヘイトなんて日本では起こっていないと思っていました。SNSで攻撃を目にして絶え間なく傷ついている人がいると思うと、胸が苦しくなりいいかげんな情報を拡散してしまう人に怒りを感じます。まめたさんの説明はとても分かりやすく、なぜそういうことが起こるのかも理解できました。
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トランスヘイトに明確に反対するコマがあって、安心して参加できました。内容もコンパクトにしかし詳しくわかり、とてもよかったと思います。ありがとうございます。
2022年1月30日(日)
10:30~11:50
※録画上映のみ。質疑応答はありません。
※この日(1/30)はライブビューイングはありません。