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分科会

1/12(日)14:30~16:00【分科会F】

レズビアンカップル(赤ちゃん付き)

【F-2】大会議室3

荒木晃子(心理カウンセラー)津田育久子(助産師)藤田圭以子(産婦人科医師)

LGBTと家族形成~生殖医療と児童福祉~

分科会報告

 最初に、生殖補助医療によって家族をつくったLGBTQのカップル4組のインタビュー映像を上映し、当事者カップルたちが、シスヘテロのカップルと同様に我が子の成長に喜びを感じ、温かい家庭を築きながらも、出産の過程や将来のこと、子どもへの告知について不安を抱えている/抱えていた現状があることを報告した。
 
 次に、津田助産院の津田育久子助産師より、ご自身の経験に基づいた周産期医療現場の現状についてお話し頂いた。実際に出会ったLGBTQカップルの例を取り上げながら、医療従事者の理解には個人差があることや、LGBTQに関心のある助産師であっても、研修環境が十分に整っていない現状を受けて、ご自身が大阪府助産師会館で定期的に開催する「LGBTQ研修会 in 大阪」の取り組みについて話された。
 
 次に、荒木晃子研究員より、LGBTQの生殖補助医療の利用について、その現状とこれからの課題についてお話し頂いた。家族形成支援のための協同体「島根モデル」創設の取り組みについて、不妊当事者に①生殖医療②ふたりの生活、③里親・養親になる、といったすべての選択肢を提示し、当事者の決断を支援する社会資源として、島根県内の関連機関に設置しているファミリー・aim・パスポートを作成していること、関連機関が連携し家族形成のための支援課題の検討会を実施していること、さらに今後、LGBTQの家族形成も支援できるようにファミリー・aim・パスポートの内容をバージョンアップする予定であることについて話された。
 また、家族形成の条件は、卵子・精子・子宮が揃うことであり、そこに性別は関係ないという考え方を示した上で、まず優先されるべきは「子どもの権利」であることも強調された。
これからは、これまでとは異なる、新たな「家族概念」の構築が必要であり、それはセクシャルマイノリティ当事者と、提供配偶子が必要な不妊カップルに共通の課題であるということを訴えた。
 
 最後に、藤田恵以子産婦人科医も加わり、
現状LGBTQが不妊治療を受けられない医療の不平等性、精子提供に関するの法整備の内容、提供に伴う認知の権限などについて、参加者から積極的な質問を受け、活発な議論が交わされた。
藤田医師からは、長年AIDによる不妊治療をおこなってきた医師が、最近、出自の告知はすべきであると言及した記事より、第一に生まれてくる子ども、第二にドナー、そして最後に当事者カップルと、確認しにくい立場から意思決定を優先していくべきであることを話され、生殖医療はここにいない子供のためのものであるとの考え方を提示された。
 また、法整備の内容に関しては、当事者はもちろんそれを取り巻く社会全体で考えるべき課題であると荒木研究員は訴え、多様な家族支援とLGBTQの家族形成を認める法整備の必要性に関して、立命館大で大規模なアンケート調査を実施予定であると伝えた。
 

 会場は約90名の参加があり、その多くは当事者や医療関係者であった。講演についての感想は「先生方の熱いお話、とてもおもしろかったです。」「現場の人の生の声が聞けて本当に良かった」など良好な反応が得られた反面、「医師の話をもっとききたかった」「島根モデルや助産院での同性カップルで家族子育て支援の具体例をもっと聞きたかった」といった声もあり、医療者や当事者の間でさらなる情報共有の必要性が感じられ、今後の課題となった。家族を作りたいという当事者の切実さと、この課題に対する医療関係者の関心の高さが感じられた。
 
 ご参加くださった方へ、この場を借りて感謝を申し上げます。ありがとうございました。
今後も、LGBTQの家族づくりについて、一緒に考えていけたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

レズビアンカップル(赤ちゃん付き)

【F-2】大会議室3

荒木晃子(心理カウンセラー)津田育久子(助産師)藤田圭以子(産婦人科医師)

LGBTと家族形成~生殖医療と児童福祉~

誰でも自分が選んだ人と家族をつくる権利がある。
子育てをするという選択肢も、すべての人が持っている。

子どもが生まれるには、卵子・精子・子宮が必ず必要だが、それらをひとつでも持っていない場合、通常、生殖補助医療の力を借りたり、里親制度といった選択肢がある。しかし、異性愛者の間でさえもそれらの利用には経済的・社会的なハードルがあるなかで、LGBTQに関してはその存在すらもほとんど想定されていないのが現状である。また、「子どもの出自を知る権利」など、生まれてきた子どもの福祉を守るための議論も不十分な状態とも言え、早期の法整備が求められる。異性愛もLGBTQも関係なく、生殖補助医療や里親制度を利用できる環境、そして、生まれてきた子ども達を社会全体で守っていく体制を整えるべきである。

様々な形で家族を持つ当事者たちを紹介し、助産師、不妊治療専門心理士、産科医それぞれの立場から、医療現場の現状の報告と課題、それを受けての対話を予定。この分科会をきっかけに、当事者からの声が高まり、法整備につながることを願う。


医療従事者と子育てを検討する当事者がともに家族づくりについて考える、貴重な機会となりますように。皆様のご参加お待ちしております。

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津田育久子

助産師。平成21年より総合病院にて勤務したのち、平成31年4月、岸和田で分娩施設として津田助産院を開業。LGBTに関わる活動も積極的におこなっている。

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荒木晃子

立命館大学大学院人間科学修士。精神科勤務を経て、現在は生殖医療施設 内田クリニック心理カウンセラー。立命館大学客員研究員 JSPS実社会対応プログラム研究実務者。専門は、生殖補助医療/社会的養護による家族形成支援の実践と研究。2010年島根県の児童相談所、乳児院、生殖医療施設、県行政、里親会、看護師、国立大学の各有志が一堂に会す家族形成支援のための協同体「島根モデル」を創設。2020年9月「LGBTと家族形成(仮)」公開学術シンポジウムを島根大学で開催予定。

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藤田圭以子

産婦人科医師。糸氏クリニック、阪南中央病院にて勤務。
専門は生殖補助医療、思春期外来。岡山ジェンダークリニックにて研修。トランスジェンダーの診療にも携わる。
戸籍変更にホルモン療法や手術要件があることに反対している。
最近は地方のレインボーパレードやレインボーフェスタにいくことにハマり中。

【分科会紹介】LGBTQと家族形成~生殖医療と児童福祉~

【分科会紹介】LGBTQと家族形成~生殖医療と児童福祉~

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