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分科会

1/12(日)14:30~16:00【分科会F】

手話講座

【F-1】大会議室1

ろうLGBTQのつながりとサポートづくり

ろう虹色塾 代表 えつ (京都)

Deaf LGBT TOHOKU 事務局 エイト(仙台)

Tokyo Deaf LGBT bond スタッフ TON(東京)

Deaf LGBTQ Center 代表 山本芙由美(大阪)

分科会報告

報告者:山本芙由美 

 

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○「ろう虹色塾」について

京都中心としたろう×LGBTQのための研究会。2018年7月から活動スタート。ろうLGBTQ当事者自身が自らの問題(困りごと)に向き合い、仲間とともに研究したり、LGBTQやSOGI関連の講演会や研修、企画の実施などを進めている。

 

○「Deaf LGBT TOHOKU」について

2013年10月14日設立。ろうLGBTQ当事者2名で活動スタート。全国のろうLGBTQ当事者から相談が寄せられるようになり、行動範囲を宮城県だけに限定せず、東北地方全体に拡大。仲間づくりやLGBTQ関連の手話指導のための教材づくり、啓発&発信の三本柱で活動を進めている。

 

○「Tokyo Deaf LGBT bond」について

関東地方を中心に活動。LGBTの基礎知識啓発、LGBTに関する講演、手話指導、当事者相談、手話通訳派遣事業など聴覚障害者による聴覚障害者のための当事者団体。

 

○「Deaf LGBTQ Center」について

Deaf LGBTQ Center は2014年5月から活動をスタート。代表の山本芙由美は2015年から二年間、アメリカの大学で「ろうLGBTQ学」を修了、カナダのろうLGBTQ啓発団体で2ヶ月間インターン。帰国後、シスヘテロ中心のろうコミュニティに多様な性について、理解を広めるための講演や手話通訳者研修、「ろうLGBTQサポートブック」の発行や多様な性をあらわす手話表現の動画制作、年一回、開催されるろうLGBTQの全国大会の運営等、幅広く活動を進めている。

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(えつ)ろう虹色塾は京都で月一回、当事者中心に集まって情報交換や勉強会などの会合をしている。一般公開講座を昨年は3回、実施することができた。新設Cチーム企画の塩安九十九氏からカナダ、トロントのクィアコミュニティについてのお話、ろう×トランスジェンダーの菊川れん氏からも自身のライフストーリーについて、また、フィリピンのろうLGBTQ団体代表らの講演会も開いた。今後も一般のろう者/聴者を巻き込めるような企画、関心をもって参加していただける企画を設けていきたい。

 

(エイト)生まれも育ちも宮城県仙台市。3年前、転勤で神奈川に引っ越した。職場は東京。性自認はFTMで性的指向はゲイだが、枯れ専で、白髪の男性がタイプ。僕自身、このセクマイと医療福祉教育を考える全国大会には第一回から参加していて、その時に山本芙由美さんと出会い、ろうLGBTQの様々な問題を聞くことができた。東北にはろうLGBTQ当事者の存在が見えず、クローゼットの人が多いので、山本さんにどうしたらいいかと相談したら、自分の地域で団体を立ち上げてみてはとアドバイスをいただいた。そのような流れで、2013年10月に「Deaf LGBT Miyagi」を設立した。ホームページを作ったら問い合わせや相談が殺到し、対応に追われることもあったが、活動を宮城県だけに限定するのはもったいないと感じるようになった。そして、団体名を「Deaf LGBT Tohoku」に改称し、現在、メンバー5名と東北地方全体で活動を進めている。メンバーの中にはカミングアウトしていない人もいるので、そのような人には裏方の仕事をお願いしている。代表のまーくんと僕はカミングアウトしているので、表に出て可視化への取り組みを進めている。

 

(えつ)当事者2名で活動をスタートされたのですね。立ち上げた当時はどのような相談が?

 (エイト)トランス対応の病院を知りたい、これからの人生が見えない、仲間がほしい、恋人がほしいとか、いろいろですね。

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(TON)私自身、ろう者として生きているが、17年前は手話のできない難聴者だった。人工内耳装着者だった時期もあり、自己流で手話を頑張って覚えていった。まず、最初に聴者の世界とろう者の世界、二つの世界で生きる私自身について話したい。レズビアン活動の出発点はサイトの「Bravissima!(ブラビッシマ)」だった。聴者に「とんちゃん一人じゃないよ、仲間がいっぱいいるよ!」と励まされた。サイト作りの流れで、障害者×LGBTQの集まりに参加し、ダブルマイノリティの活動に衝撃を受けた。昔は今ほど性についてオープンにまだ語られることはなかった。障害者だともっと語ることが難しい状況だった。そして、2002年「私はろう者のレズビアンです!」といったスローガンのTシャツを着て、初めてプライドパレードに参加した。当時の写真がレズビアン雑誌「アニース」に掲載され、そこで初めて自分自身を可視化させることの大切さを知った。そして、毎年、東京プライドパレードに参加している。そのように、オープンリーレズビアンとして活動スタートした翌年、突然、失聴した。中途失聴で、人工内耳装着者になった当時、「人工内耳装着者は(ろう者)ではない」と批判の的にされ、かなり苦しい時期もあった。

「Tokyo Deaf LGBT bond」は第1回ろう×LGBTQ全国大会が東京で行われることになったために立ち上げた団体で、私もスタッフとして楽しく活動している。手話通訳者育成、手話通訳派遣、相談なども受けている。去年の5月から手話講座を始めた。ろう者の中にもセクシャリティをオープンできない人がたくさんいる。存在を隠さずに生きられる社会を目指したい。聴者と共にバリアを取り除いていきたい。

 

(えつ)TONさんは様々な世界を渡り歩いてきて、それでもLGBTQとの関わりを持ち続けられてきた。そのようなモチベーション持続の方法については?

 

(TON)聴者のレズビアンの仲間がたくさんいたおかげだと思う。自分が落ち込んでいる時、いつも励まされてきたし、それが一番大きいと思う。

 

(えつ)仲間の存在って大切。一人だけで活動は続けられない。今回の分科会の大きなテーマだと思う。そのような意味でいえば、ろう×L G B T Q全国大会の継続って、とても大切。今年の第5回は福岡県で開催され、実行委員長の野村恒平(Deaf LGBTQ Fukuoka)さんは九州地方の孤立している実行委員を頑張って集めたり、大会成功へと導いた。また、フィリピンろうLGBTQ団体の代表らを招聘し、国際交流を深められたと聞いている。参加されたエイトさん、TONさん感想いかが?

 

(エイト)とても素晴らしい大会だった。この大会は国際化してきていると思う。今後も時代に合わせた大会を開催し続けてほしい。

 (TON)その福岡大会の翌日、聴者の福岡レインボープライドがあって、パレードに参加した。普通に歩くだけじゃつまらないので、自分たちでサイン「アイラブユー」を決めて、参加者と共有させて一緒に歩けたのが楽しかった。バスの中の乗客からも手を振ってくれて。

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(山本)「Deaf LGBTQ Center」がろうLGBTQとして初の団体ではない。1990年代に「JRDC(Japanese Rainbow Deaf Club)」といった、ろうゲイ中心の団体があったが解散、その後、関西にも「関西デフレインボー」という団体が設立、そのような流れを汲んで、今の私たちの活動が続けられていると感じる。

Centerの事業には大きくまとめて、6つに分けられる。①啓発や発信 ②講演や研修 ③ピアサポート ④手話通訳者トレーニング ⑤ろう×セクシュアルマイノリティ全国大会の運営 ⑥海外調査/交流などがある。⑤について、2019年11月には福岡県で第5回の全国大会が開催され、国際交流基金アジアセンター からの助成でフィリピンろうLGBTQ団体の代表ら3名を招聘、アジアとの交流を深めることができた。参加者は年々増加していて、第3回の大阪大会では130名の参加があった。2020年の開催地は群馬県で準備を進めている。2021年の開催地も決まっている。これまでの全国大会の様子を見ていると、ろうLGBTQの中で分裂が起きていると思う。分裂は悪い意味でなく、良い意味で様々な立場や考えがあってそれを可視化させるということ。そのような状況の中で、ろう×トランスジェンダーのグループが必要ではというニーズが上がってきている。また「L G B T Q」の手話表現についても「L」が最初の「L+いろいろ」で、「G+いろいろ」ではないのかという意見がある。英語圏において最初の頭文字が「G」から「L」に変化していった運動の歴史があり、手話もそのような表現になっている。そのような歴史を知らないろう者が多く、それを学ぶ場が必要だと感じる。ろうとしてのアイデンティティについても、登壇者それぞれ言語的、教育的背景が異なる。そういう意味でいうと「ろう×LGBTQ」は複合性、交差性をもつマイノリティとして可視化させて行く必要がある。①について、「ろう×LGBTQサポートブック」はろうコミュニティや手話通訳者のネットワークだけでなく、全てのコミュニティにおいて「インクルーシブ」という視点で大変効果的なものとなったと考えている。ブックが無くなった今でも注文が寄せられていて、第3弾を作る必要性があるのではと思う。今後は私自身の留学で構築したアメリカやカナダ、そして、フィリピン、それぞれのろうLGBTQコミュニティのネットワークをどんどん巻き込んで、活かしていきたい。今年、2020年第6回大会が群馬県で11月7日&8日に開催される。ストレートの方も聴者の方も参加できるオープンな大会なのでご関心のある方、ぜひご参加ください。

 

(エイト)Deaf LGBTQ Centerがこれまで大会運営をされてきたが、そのような打診をそろそろ地域に任せてはどうだろうかと思う。また、Deaf LGBTQ Centerと全国各地のろうLGBTQ団体との連携を強化していただきたい。ろうトランスジェンダーのグループを設立させることで、それも、それぞれの地域にも広めていきたい。

​以上。

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分科会の感想

●ろうLGBTに対するサポートがまだまだ不足していると感じました。聴者として少しずつでも協力できればと思います。個人的にトランス男性がトランス関連の治療を受けられる医療機関の情報を公開しているホームページを持っているのですが、ろう者にも使いやすくなるよう考えて工夫できればと思います。
●ろうLGBTQ団体がまだ少ないのが現実。でも、この分科会に参加し、地方ごとにLGBTQ団体を増やし、悩みがある人が来れるような事ができたらいいと改めて思いました。自分で何ができるか?周りの人と力を合わせていけると思いました。
●これまで様々な活動を続けてこられた方々、本当にすごいことだと思いました。自分も何かしたい、そう思いました。情報保障、ありがとうございました。手話の読み取りが苦手なので助かりました。
●各地域のろうLGBTの活動を知ることができてよかった。立ち上げて活動する事は、大変なこともあるのに、継続して活動されていること、当事者として発信されていること、さらに通訳者に手話を教えるなど、とても尊敬します。まだまだクローズの当事者も大たくさんいると思います。そんな方々にとっては、心の支えになる団体だと痛感しました。
●皆さんのパワーを感じることができました。
●当事者の話はすごく迫力があってよかった。ろう者の中にあるLGBTQに対する差別について考えた。
●「ろう× LGBT」について初めてたくさんのことを知れて、本当に良い時間になりました。手話にも興味が湧いたので、勉強したいと思います。
●各地の活動や聴覚障害者やろうの立場のいろいろを知れてよかったです。最後に出た「団体を立ち上げることができても継続が大変」「メンバーの意識の違い」などは聴者の団体でも同じ悩みだなぁと思いました。
●各地のそれぞれ異なる状況を知ることができてよかった。(地域によって違う、セクによっても違う、障害のある方でも違う)ゲイ男性の特権のことも、名指しして議論できるようになってきてよかった。

女性手をつなぐ

ろうLGBTQのつながりとサポートづくり

​えつ(ろう虹色塾/代表)
エイト(Deaf LGBT TOHOKU/事務局)
トン(Tokyo Deaf LGBT 【bond】/スタッフ)
野村恒平(Deaf LGBTQ Fukuoka/代表)
山本芙由美(Deaf LGBTQ Center/代表)

5年前から立ち上がった、ろうLGBTQ全国大会は毎年参加者を増やし文字通り全国で展開されている。また、アメリカ、カナダ、フィリピンなど国際的な交流を通じて、世界のろうLGBTQとのつながりもできてきた。また、手話通訳派遣や正しい知識のための研修なども行っている。そうしたこれまでの様々な取り組みや成果、学びについて報告したい。その上で、まだまだ全国のろうLGBTQの繋がりが十分とは言えない状況を変えていくために、更なるネットワークづくりについて考えていきたい。孤独を感じる人を減らすこと、多様性のある環境を聴者と共に作っていくこと、更には、ろうLGBGTのためのセーフティーネットのシステムなどについても、議論していきたい。
(音声通訳あり。聴者の方も参加可能です。)

 

むこう2年のろうLGBTQの全国大会は開催地が決定している(!)という積極的な運動参加とコミュニティビルディングはどのようにして可能なのか。5年間で劇的に広がったネットワークと活動がどのような展開だったのか、ろう者はもちろん、聴者にも参加してほしい分科会。

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ろう虹色塾/代表

えつ

ろうレズビアン。2018年7月からろう虹色塾の代表を務める。ろう虹色塾は関西を中心としたろう者かつLGBTQ当事者のための研究会。ろうLGBTQ当事者自身が自らの問題(困りごと)に向き合い、仲間とともに研究したり、セクシュアリティやLGBTQ関連の講演会や研修、企画の実施等を進めている。

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Deaf LGBT TOHOKU/事務局

エイト

FtMゲイ/枯れ専。東北地方の聴者LGBT団体とのつながりを強めながら、ろうLGBT当事者にとって心のバリアフリーができる社会を目指し活動している。

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Tokyo Deaf LGBT 【bond】

スタッフ

トン

教育系短大卒、元人工内耳装着者。2003年〜プライドパレードに参加し、プラカード「聴覚障害者の中にもLGBTがいます」をアピール。現在、当事者コミュニティづくりと手話指導、また聴者LGBTQと一緒に活動するための方法を模索中。

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Deaf LGBTQ Fukuoka/代表

野村恒平

2018年4月Deaf LGBTQ Fukuoka設立。福岡県を拠点にろうLGBTQコミュニティづくりや講演、ワークショップ、手話通訳士/者のための講座を実施するなど活動を進めている。

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Deaf LGBTQ Center/代表

山本芙由美

シスジェンダーのクィア。兵庫教育大学院でろう幼児をもつ親の支援について研究、博士前期課程修了。2015年から2年間、日本財団の奨学金を得て、世界で唯一のろう者のための教養課程が学べる大学、ワシントンDC:ギャロデット大学で「ろう×LGBTQ学」を専攻。2018年、国際交流基金アジアセンターフェローとしてフィリピンのろうLGBTQコミュニティの活動調査を実施。現在、ろう×LGBTQサポートブックや多様な性を表す手話表現の動画制作、ろう×セクシュアルマイノリティ全国大会の運営など、ろうLGBTQ活動を幅広く開拓。インクルーシブなろうコミュニティづくりを目指して活動している。

【分科会紹介】ろうLGBTQのつながりとサポートづくり

【分科会紹介】ろうLGBTQのつながりとサポートづくり

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