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分科会

1/12(日)12:30~14:00【分科会E】

障害×LGBTQ 分科会報告書

登壇者 植木智、けい、山本芙由美

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(植木)自分の性別違和について気付く余裕が無かった。知りたいけど、認められないという気持ちだった。重度の身体障害を持つトランスジェンダーがいるというロールモデルが無かった。「普通」ではないアイデンティティを引き受けることへの恐怖もあった。「俺たちは性同一性障害だけど障害者『なんか』じゃない。」等の書き込みに傷つく。周りを信用できなくなり、一人で問題を抱え込んでいた。セクシュアリティの肯定が難しかったため自分に自信が持てなかった。今後は、障害とLGBTQに理解のあり、安心して継続的な相談ができる場所や人の確保、LGBTQ関連の医療やコミュニティのバリアフリー化とアクセシビリティ対応のデータベース化、福祉サービス事業所の運営者や相談者、障害当事者団体に向けてセミナーの開催が必要だと思う。

(山本)ろう性的マイノリティ特有の問題として、シスジェンダー&異性愛中心のろうコミュニティにLGBTQやSOGIへの理解が広まっていないため、「ホモ」や「おかま」などの侮蔑的手話表現が未だにも使われている。また、性別二元論を中心とした手話表現が手話通訳者養成講座で指導されるため、公的な手話通訳制度を使いたがらないろうLGBTQの人たちがいる。聴者のLGBTQコミュニティに情報保障(手話通訳やパソコンティクなど)への理解がなく、ろう者が疎外されてしまっている現状がある。行政の相談窓口には電話対応が多く使いにくい、などが挙げられる。

今後は、ろう×トランスジェンダーのグループの設立、LGBTQ・SOGIの知識を持った手話通訳者の育成を強化、ろう×セクシュアルマイノリティ全国大会の維持、「ろう×LGBTQサポートブック」第3弾の作成、東南アジアろう×LGBTQ会議の開催に取り組みたいと考えている。

(けい)何か今後の展望があるわけでも、活動的なわけでもない。重度化や高齢化等、あまり先のことを考えたくはない。多くの福祉サービスの支援を受け、過密なスケジュールをこなす毎日。トランスジェンダーであり障害者である半生を振り返れば、両親が不仲だった家庭環境や歴史ある家系の長男として生まれたことのストレスやプレッシャーが、現在の自分の障害や状況を形づくったのではないか。

 

ディスカッションでは、障害者であり、セクシュアルマイノリティである自分についてどう考えているかについて、「ろう、クィアであることはアイデンティティとして確立しているが、リウマチについてはまだ確立していない部分がある、障害を一つにまとめるのは難しく、それぞれ受容のプロセスがある、今後、複合性や交差性を考えていく必要がある」(山本)と回答があった。活動のモチベーションになっていることについて、「ろう性的マイノリティの仲間の存在、そして、マイノリティ同士の横のつながりが重要」(山本)と回答があった。

 

会場からは、福祉・医療職に対して求めることが質問され、「ジェンダークリニックのバリアフリー化」(植木)、「当事者と対等な関係であること、強力なアライであること、障害や病気はもちろんLGBTに関しても正確な専門知識を持つこと、当事者がカミングアウトを様々な場面で要求されるということを理解すること」(けい)という回答があった。

​掲載日 2020年2月10日

​画像の掲載日 2020年2月16日

松葉杖を持つ人

【E-1】大会議室1

障害×LGBTQ

植木智、けい、山本芙由美

障害があること、セクマイであることで、発生する困難や独特な状況は、今まであまり可視化されてこなかった。まずは、当事者がどのような人生を歩んだり暮らしをしているのか、知る機会としたい。また、主に日本国籍の健常者LGBTQが異性愛中心社会に対して性の多様性やインクルージョンを訴えている現在、LGBTQコミュニティ内でのダイバーシティにも敏感になっていく必要がある。LGBTQコミュニティをもっとインクルーシブにし、様々な立場が参加しやすい状態にしていくため、当事者内の多様性を提示する機会にしたい。インターセクショナリティの只中を生きるパネラー同士の対話からも新たな視点を得られるだろう。

今まで存在が見えてこなかった障害者でありLGBTQである当事者の語りから交差するマイノリティ性を知り考えます。病院や福祉サービスでの扱い、改善を望む点、工夫していることなど、複数の立場からの発表。医療福祉従事者やLGBTQ健常者、異性愛障害者の方ぜひどうぞ。

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山本芙由美(やまもとふゆみ)

ろうLGBTQを支援する団体Deaf LGBTQ Center代表。兵庫教育大学大学院博士前期課程修了。日本財団の支援を得て2015-2017年ギャロデット大学(米国)で、ろうLGBTQ 学を専攻。2018年12月〜約1ヶ月間、国際交流基金アジアセンターフェロー/研究員としてフィリピンろうLGBTQコミュニティ活動調査を実施。現在『ろう×LGBTQサポートブック』の発行や講演、原稿執筆、ろうセクシュアルマイノリティ全国大会運営等、幅広く活動。

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植木 智(うえきさとる)

1985年生まれ。脳性麻痺による身体障害者。セクシュアリティはFTMトランスジェンダー。2004年に介助サービスを利用しながらの一人暮らしを開始。大学で社会福祉を学び、社会福祉士の資格を取得。2009年〜2016年まで自立生活生活センターで障害当事者スタッフとして活動。また、2010年にカミングアウトを開始し、身体障害をもつトランスジェンダーとして介助者を段階的に女性から男性に移行し、現在は男性介助者の支援で生活している。

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​けい

精神障害があり、日常生活の支援として家事についてヘルパーを利用して暮らしている。訪問看護も利用。セクシュアリティはMtX(かなり女性寄り)。

病院で作業療法士(OT)として勤務した経験がある。

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