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分科会

1/12(日)10:00~11:30【分科会D】

レインボーフラグ

【D-4】中会議室3

朝日新聞大阪社会部記者 花房吾早子(はなふさあさこ)

米サンフランシスコからの報告
―LGBTQ+コミュニティでの研究・ボランティアから見えたこと

分科会報告

 

 本分科会では、2017年9月から2年間サンフランシスコに留学していた報告者が、現地での体験をもとに「LGBTQコミュニティの歴史を語りつぐ」実践例を紹介した。

 

 サンフランシスコは「世界一クィアフレンドリーな都市」との呼び名をもつ。そのゆえんとして、市内各地にクィアな歴史や文化を守り、次世代へ継承しようとする動きがある。そのひとつが、市役所が2014年に始めた「文化遺産地区の指定」だ。特徴ある文化が根づく地区を指定し、市の都市計画部局と地域の代表者らが連携して文化の保存や発信をする。日本町を皮切りに、ラテン系移民が多く住むミッション地区や黒人が多く住むベイビュー地区などが指定を受けてきた。クィア関連では、2017年にテンダーロイン地区がトランスジェンダー文化地区として、18年にサウス・オブ・マーケット地区がレザーとLGBTQ文化地区として、19年にカストロ地区がLGBTQ文化地区として指定を受けた。たとえば、テンダーロインでは、地区内すべての電柱に、トランスジェンダーを象徴する三色旗の柄をペイントするなど取り組みが進む。

 二つ目に紹介したのは、カリフォルニア州によるLGBTQの歴史教育だ。12年、社会科の授業でLGBTQに関する歴史を教えるよう求める州法が施行された。これを受け、州立の小中高校で、米国の一般史の中で活躍したLGBTQにふれたり、1950年代・60年代における初期のゲイの権利運動の歴史、80年代・90年代のエイズ危機の歴史などを伝えたりする教材が使われている。三つ目に、サンフランシスコを拠点に活動するNPOの独自の取り組みを挙げた。演劇や音楽、政治や経済など各分野で功績を残したLGBTQの銘板をカストロ地区の歩道に埋め込む活動、若者が自らのルーツにひきつけてLGBTQの歴史を学んで大人に伝えるウォーキングツアーなどを紹介した。最後にまとめにかえ、権力ある立場にある白人男性が書いてきた「歴史」のかげで、女性や有色人種、バイセクシュアルやトランスジェンダーなどそれぞれの立場から掘り起こし、書き残す「歴史」の集積がコミュニティの歴史になることを指摘した。日本には日本のコミュニティの歴史があり、その発掘、保存の方法もまた、日本や地域ごとに異なるであろうことも付け加えた。

 聴衆からは、報告者の留学の意図や現地での研究内容、性別や階級、人種などひとりの人がもつ様々なアイデンティティに着目する「インターセクショナリティ(交差点)」という概念が日本で広がる可能性、LGBTQコミュニティ内の人種差別や階級格差の解決策などについて、質問が出た。報告者の反省点としては、活動を紹介した市内のNPOが、いずれも運営の中心が白人層だったこと。黒人、ラテン系、アジア系、ネイティブ・アメリカンなどそれぞれの人種・民族によって運営されているNPOの催しに参加した経験もあったため、それらを報告に含められると、より幅広い活動を紹介できたかもしれない。2年間の経験をまた別の切り口から報告できる機会を見つけたい。

レインボーフラグ

【D-4】中会議室3

朝日新聞大阪社会部記者 花房吾早子(はなふさあさこ)

米サンフランシスコからの報告
―LGBTQ+コミュニティでの研究・ボランティアから見えたこと

「世界一クィアな都市」として知られる米サンフランシスコ。近年、テクブームと高級住宅化の波に飲まれ、刻々と街並みが変化するなか、市役所、教育機関、非営利団体がどのようにクィア・コミュニティの歴史を保存し、語り継いでいこうと試みているか、紹介する。「ゲイ・キャピタル」と言われるカストロ地区は、1930年代から第二次大戦後、カソリック系アイルランド人で労働者階級の人々が住まう地域として知られた。リベラルな文化が花開いた60~70年代になり、ゲイやレズビアンらが住み始めたことでクィア・コミュニティとして確立し、カリフォルニア州初のゲイ市会議員ハーベイ・ミルクを生んだ。そのほか、トランスジェンダーの有色人種女性が警察の暴力に立ち上がった歴史があるテンダーロイン地区、レザーやBDSMを楽しむ場が集まるサウス・オブ・マーケット地区は、市から文化地区の指定を受けた。こうした地域の歴史を守る取り組みの他、歴史に名を残したLGBTQ+の発掘、小中高生へのLGBTQ歴史教育、若者による歴史を伝えるウォーキングツアーなども行われている。現地で体験した例をいくつか取り上げたい。

主催者からのメッセージ:

昨年8月まで2年間留学し、大学・大学院で学んだほか、毎日のように地域のクィア・イベントに参加し、ボランティアをしました。白人ゲイ男性に彩られた歴史の陰で、語られてこなかった有色人種のクィア・コミュニティの葛藤を肌で感じました。歴史の発掘、保存、継承を通して「私たちはいつの時代もいた」というメッセージを届けようとする人たちの姿を皆さんと共有できたらと思います。

<写真>2019年年8月中旬、カストロで行われた反人種差別デモ

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D-4 米サンフランシスコからの報告―LGBTQ+コミュニティでの研究・ボランティアから見えたこと

D-4 米サンフランシスコからの報告―LGBTQ+コミュニティでの研究・ボランティアから見えたこと

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