分科会
1/11(土)15:30~17:00【分科会C】
【C-3】中会議室2
山城Jay
オーストリアのLGBTQ難民支援の現場から
分科会報告
オーストリアのウィーンでLGBTQ難民支援を行っている山城さんにお話を伺った。
そもそも難民の中にはLGBTIQが犯罪以外の何ものでもない、という考え方をしている人たちが多く存在していて、難民を受け入れる場所は多数あるが、その中でLGBTIQの難民がさらに隠れて生活をしていることが、山城さんはとてもショックだった。LGBTIQ難民専門のクリニックを作ればその人たちも安心してクリニックに来てくれるんじゃないかということで、プロジェクトがスタートした。プロジェクト5年以上継続しており、心理セラピーのケース自体は100軒以上。
難民は、同性愛に対して犯罪化しているところから難民としてやってくる人たちが多い。元々中近東の辺りでは、それこそ死のリスクを負うことが多い。イランとか今でも処刑をしているし、アフリカの一部の地域でも処刑がある。またロシア語圏、ロシアは同性愛は合法だが、今やそのLGBTIQの人が道で襲われたとしても警察が何もしないというような状況 になっている。
そのような状況で、さらに事態を複雑化させているのが、名誉殺人という家族の恥を消し去らねばならないという同族からの迫害だ。国外に逃げても、家族が本人を殺すために執拗に追いかけて来たり業者を雇うことさえある。また、難民は逃げる道中で人身売買にあうなども辛い経験をしている人が多い。拷問や迫害を逃れてきた人々のメンタルヘルスは大変悪く、クリニックに来る人々は自殺未遂後、精神科入院を経てクリニックにつながる人が多い。
このような重たいケースばかりの状況を支えているのが、チームでのセラピーだ。ひとりで聞いていては身がもたない。多い時は10人近くがセラピーに参加すると言う。密告が常態化している共産圏の難民に配慮し、同じ言語を話す人をセラピーに入れないことも安心を確保するために重要だ。また、従来の対話中心のセラピーにこだわらず、身体を動かしたり、演劇のようにしたり、時には料理教室の先生になってもらったり、工夫を凝らしている。
やはり、メンタルヘルス、依存症、自殺行為などの関係から、医療者とのコネクションは必須で、山城さんは独自のネットワークを駆使して、難民キャンプ、精神科、精神病院などとの連携を図っている。日々の生活に追われながら、過去のトラウマと将来の不安との間で大きく揺れながら生きている難民の人々を支えるには、あらゆる社会震源とのネットワークを作り、自分の限界を知り、国際的なチームで対応していく必要がある。
この活動で嬉しい時は、クライアントが難民として認定されてオーストリアで生きていけるとわかった時だが、その後もクリニックに続けて来て何らかの形で、支援していきたい。おそらく人生の長い一部の一番変化が激しい時期を一緒に歩いていく、そういう経験ができることも喜びのひとつだ。もう1つはプロジェクトをいろんな意味で受け入れてくれる人たちが増えていること。それは場所を提供してくれるスクール、プロジェクトに参加したい学生たちだ。そしてその学生たちの多くはLGBTIQに優しくない国出身だ。将来的にこの活動を続けていくことによって、何らかの希望を育てている感じがして、そこがやはり一番嬉しいところだそうだ。
30人程度の参加があり、質疑応答は時間がなくなるほど、相次いで質問が出た。ソーシャルワーカーの中でも外国人支援や国際的な活動に関心がある方々から様々な視点での質問だった。 日本の難民認定数は世界でも最も少ないレベルだが、今後益々外国人支援のディテールの需要が高まっていくであろう。日本でもこうした認識や知識が広がって行き、行政、民間、医療その他の領域が連携していけるようになることを願う。
参加者の感想
●貴重な話を聞けた。文化的宗教的な背景にどのように配慮しそれに応じた支援をしている点と、心理セラピーとして共通する特徴とがあったと思う。このような機会をいただいたことに感謝します。
●重たい話が多かったですが、今後将来的に役立ちそうなことがとても多かったです。
●素晴らしいプレゼンをありがとうございます。非常に厳しい状況であることを聞いて驚きました。ライブのSkype中継とても良かったです。
●オーストリアでの難民の方について、シビアな状況を伺いました。性の状況を取り巻く、国の状況、宗教、文化のあり方、サポート体制、具体的なセラピーについて、知ることができました。留学生のサポート、あるいは外国に行く方の支援の参考になりました。
●日本の現場から遠く離れた経験からくる貴重な話で、とても価値を感じました。
(塩安九十九)
※山城さん一時帰国のため、更にお話を伺う会をします!2020年2月1日(土)18~21時
【C-3】中会議室2
山城Jay
オーストリアのLGBTQ難民支援の現場から
オーストリアのウィーンでLGBTQ難民支援を行っている山城さんに、LGBTQ難民支援の詳細をお話いただきます。地域によって異なる背景を持つ人々への多言語での支援、名誉殺人や人身売買などの過酷な状況から逃れて来たがゆえの重いトラウマ、異文化で孤立しがちなLGBTQ難民特有の困難など、どのようなセラピーを行っているのか紹介して頂きいます。60分の講演の後、現地にスカイプを繋いで30分の質疑応答となります。
講演では下記の質問に答えていただく形でお話を伺います。
・LGBTQ難民はどこからやってくるのですか。また、地域によって特徴がありますか。
・なぜLGBTQ難民にカウンセリングが必要なのですか。
・カウンセリングの場所や、状況など、どのように配慮していますか。
・チームでセラピーをするのはなぜですか。
・拷問など重度のトラウマに対してどのようなアプローチをしていますか。
・LGBTQ難民の話を聞く際に気を付けていることは何ですか。
・病院、大学、カウンセリング専門学校などとの連携の必要性を教えてください。
・ダブリン条約や他国の支援団体などとの連携の様子を教えてください。
・日本でLGBTQ難民の支援をするかもしれない人にアドバイスをお願いいたします。
今後日本の国際化が進むことが予想されます。様々な立場、背景の外国人そしてLGBTQの人々に出会う機会も増えていくことが予想されます。そうした支援の場に役立つお話です。特にサバイバーや自殺経験者などへのセラビー従事者、心理職、外国人支援者に是非聴いて頂きたいです。