分科会
1/11(土)10:30~12:00【分科会A】
【A-2】大会議室3
山田公二
カナダ・トロントの市立特養でのボランティア経験から見える
「老人ホームでのLGBTインクルーシブ」の意味と実践
分科会報告
この分科会では、カナダに10年以上暮らしている山田公二さんに、高齢者福祉施設でのボランティアの体験をお話いただいた。講演の前半では、なぜカナダが世界でも有数のLGBTQが暮らしやすい国になったのかという背景の説明に当てられた。
カナダの発展の経緯の中でいろいろな過ちを犯しており、いかにヨーロッパの白人の都合のいい国にするかということでいろいろを犯してきた国家犯罪がある。例えば、土地や資源を強奪するために、先住民の人たちを撲滅しようとし、文化を奪うという政策を国が何十年にもわたって行ってきたり、第二次世界大戦中には2万人以上の日系人が強制収容の被害にあった。カナダはそれらの国家犯罪を深く反省し、もう2度と起こらないよう人権に関わる項をすべて分けて人権憲章というものを憲法の中に掲げ、さらに具体的な差別を禁止する法律、カナダ人権法を作った。実はこれがLGBTの人たちがいかに幸せに暮らしていけるかと言うことに直結している。例えば、18-19世紀のLGBTQの状況はというと、男性同士の同性愛行為は重い犯罪だとみなされ1960年ぐらいまで取り締まりを激しく行っていたし、病院などでも同性愛が精神病であるという間違った認識が1970年代まであった。そこでやはり必要なのが、性的指向、性的自認、性表現を理由に差別をすることはいけないと人権法にはっきりと明記されることだった。
後半はこうした背景のカナダで、厳しい弾圧の下で生まれ育った現在の高齢者のLGBTQの人たちがどのように終の棲家であるファジャ―ハウスで暮らしているのかが紹介された。また、山田さんが出会ってきたLGBTQと思われる住人との思い出が語られ、ひとりひとりの生きて来た姿が目に浮かぶようだった。自分については語らないけれど、虹色のものを身に付け嬉しそうにLGBTQのイベントに参加する住人がいるのは、ファジャ―ハウスでの長年の取組の成果だ。
山田さんは、自分がゲイであることを完全に受け入れてそれを享受している一方で、90歳になる男性は様々な人生の中での歴史的な暴力や、差別のせいで自分がゲイであるということをなかなか認められずにここまで来ているということを接する中で感じ、自分の世代が果たすべき役割や責任について考えていると述べ講演を締めくくった。
参加者の感想
●カナダ、トロントの事やトルドー首相の発言などでカナダと言う国に興味を持っていたが、今日山田さんの話を聞いて、過去の歴史と向き合うことから人権法が整備されていったことを知り、日本の今の政府は全然その境地に至っていないことに絶望しつつ、これからやるべき事はたくさんあると思いました。人権法の成立に向けてイシュー串刺しで連帯していくことが必須なんだと思います。
●私は聴覚障害があります。一般的には事前に参加することを主催者に連絡し手話通訳をお願いしていますが、今日は、どの分科会にも通訳がいて、自由に分科会を選べるのが嬉しかったです。ありがとうございます。介護に興味があり、今日のお話は大変よかったです。一人一人が自分の望む最期を迎えることができる社会になってほしいです。
●カナダの歴史から説明していただき、今現在のカナダ人権法が制定され、各自の人権を守られていることを知りました。日本でもいろいろな人権を守られる意識を子供の時から身に付けられるような、教育、法律制度ができればいいと思いますか?カナダ人権法ができる(設定)されるまでのプロセスが知りたいと思いました(インターネットで調べてみたいと思います。)
●山田さんのヒストリーを踏まえて時代の変化、カナダの今を知ることができました。自分が生きやすい場所を見つけ、仲間を見つけて、楽しく安心して暮らしている様子を聞けて嬉しかったです。性の分化を正しく伝えていく事を特に小学3年生位から科学として人の生の文化を伝えていくと偏見は少しずつ少なくなっていくのではと考えます。男らしく女らしくからその人らしくになると思います。
●カナダの歴史について聞くことができ、現在はLGBTのパレードなどで有名なカナダでも、歴史の差別の歴史があったことを知りました。そのような時代背景で長い間抑圧されてきた人たちを、次の若い世代の人がどのように関わっていっているのかと言う事について、とても勉強になりました。抑圧されてきた時代を生き抜いた人たちと、そこから解放された人たち、そのギャップをしっかりと自覚し、それぞれの立場に置かれた人が、少しでも良い状況に暮らせるように、誰も置いていかれない、またすべての人に向けた説明(最後の話)
についても個人的にとても考えることが多かったです。
● LGBTの立場、歴史について考えさせられた。日本とは全く違った考え。死ぬ間際どのように終わるかを考えさせられた。
(講演部分68分はYoutubeで閲覧可能です。)
(塩安九十九)
【A-2】大会議室3
山田公二
カナダ・トロントの市立特養でのボランティア経験から見える
「老人ホームでのLGBTインクルーシブ」の意味と実践
ゲイとしてカナダ人のパートナーと結婚し、カナダに移住して12年の山田二さんに、LGBTQが暮らしやすいと言われるカナダでの高齢者施設の状況を報告して頂きます。
日本ではまだまだLGBTQ高齢者の存在が顕在化していませんが、今後対応が必ず必要になります。また、山田さんが出会ったひとりひとりのお年寄りがどんな人生を歩んできたのかを知ることは、私たちの将来を垣間見ることでもあります。
高齢者福祉関係者以外にも、人権教育、多文化共生、外国人支援などの関係者にも是非聴いてもらいたいお話です。言語、文化的背景、宗教、習慣などが異なる人々が共に暮らすにはどのような社会基盤が必要なのか、また、それぞれが最後まで自分らしく暮らすために、私たちがどう個人に向き合えばいいのか、ヒントを得られます。
60分の講演の後、現地にスカイプを繋いで30分の質疑応答となります。
【講演内容】
カナダという国はどんな国か(人権尊重の国への道のり)
カナダという国でのLGBTを取り巻く状況(歴史を振り返って)
トロントという街について
トロントの市立特養の位置付け
ファジャー・ハウス(Fudger House)の紹介
ファジャー・ハウスで出会った居住者の人たち
ファジャー・ハウスでのボランティア活動
ファジャー・ハウスでボランティアをして見えてきたこと
※こちらの洋書読書会の動画で分科会に関係する話をしてくださっていますので
チェックしてみて下さい。01:39:00ごろからお話しています。