報告文
この分科会には、約70名の参加があった。
津田さんの様々な活動を順次紹介することにより、地域に根差した活動の可能性と広がりを感じる話を聞くことができた。中高での思春期セミナーでの内容や、先生方とのやり取りの工夫なども参考になったが、教員研修をした後に教員の人数だけレインボーフラッグを配布するというのは、当事者がどこを見ているか、気にしているか、そうした声をしっかり聴いているからこそできる粋な心配りだ。中学生への個別対応の事例紹介でも、Youtubeなどで情報収集している中学生のリアルが伝わってきた。デジタル世代の感覚を理解する上で、とても重要な機会とのことだった。
そうした教育現場へのアプローチを数値でもまとめておられ、1970年代にはLGBTQが非行として教員過程で教えられてきた問題点、一方若い世代では教員過程でSOGIに触れる機会があること、知識がある教員ほど、LGBTQ生徒の対応経験があるなど、現場の実態把握も進めておられた。
主催している「レインボーカフェin岸和田」の参加者へのインタビューでは、津田さんの開いたコミュニティが、当事者としての居場所になっていたり、地元の専門職のハブとしての機能を果たしているという証言が聞けた。大量の資料を搬入してのカフェは、さながらLGBTQアーカイブス、定期移動図書館のような役割をも果たしており、コミュニティの歴史や豊かさを体現する場所となっている。
また、活躍している助産師を掘り出しプロデュースするラジオ番組でも、LGBTQの当事者をゲストに招いたりと、人々の認識にダイレクトに働きかけている活動は、現実的で具体的だ。是非それぞれの地域でメディアの活動をされている方は参照されたい。
最後に、LGBTQな妊娠出産経験者からの体験についても、様々な家族の在り方をサポートする助産師の立場で現場の事情をわかりやすくお話くださった。
質疑応答では、講演内容について学校側との温度差があるか、生命誕生の授業をどのように異性愛中心にせずに行えるのか、など参加者から様々な質問が出た。
LGBTQが家族を持つことがまだ難しい現在だが、今後様々な形態の家族が増えていくことは必須で、助産師や医療関係者からの協力も必須となる。津田さんのようなアクティブな医療従事者を応援し、共に前進していけたらと改めて感じた。
企画者:塩安九十九
【アンケートより一部抜粋】
●画面越しであっても、津田さんのパワーを感じることができた。「LGBTQのことを学ぶのはあたりまえ」という姿勢で常に前進し、周りを巻き込んでいくその動き方にも自分も学びたい。
●助産師で大学で教えています。近い立場で「うん、うん」とうなずきつつ、関西訛りの親しみやすさでしょうか、声を出して笑いながら聞かせていただきました。大変力強くて、津田さんに念を込められた気分です。
●津田さんのバイタリティに、刺激を受けながら聴かせて頂きました。私も性教育をお伝えしていますが、異性愛前提でないこと、恋愛や結婚や妊娠出産をすることが当たり前でないことを心に留めつつ‥でも迷いつつ、学びつつお伝えしています。
●DSDsについてもお話を伺って、LGBTQの方にも、DSDsの方にも、どの方も傷つけたくない想いが深くございます。
●津田さんが仰っていたように、失敗をしてしまうこともある。そのご指摘を受けながら懸命に歩んで参りたい、と思います。ありがとうございました。
●普段から一緒に学びを深めている仲間のひとりです。いつもパワフルな津田さんが頼もしいです。
●現場の話が興味深く、よかった。
●インタビュー形式でよかったです。発表ばかりでなく、このような分科会もいいなあと、思いました
●人権意識を持つことの大切さをかつて、ろうあ者運動から学ばせてもらったが、本日の3つの分科会でも人権意識を意識して持つことの難しさと大切さを改めて考えさせられました。塩安さんがトライ&エラーのお話をきいて、失敗しつつも歩み続けて行きたいと思いました。
【登壇者】
津田育久子(助産師)
司会:塩安九十九
【開催形式】録画配信+LIVEでQ&A
当日資料
中学校や高校などの性教育の現場に、助産師として話に行く機会が多い津田育久子さん、近年の現場の状況とともに、どのように性の多様性も含めた教育を行っているかを伺います。これまで、学生たちに伝えることは、性感染症、生命誕生、二次性徴、交際、デートDVなどについてでしたが、近年は学校からLGBTQについても説明を求められるようになってきたそうです。命の教育の中でLGBTQなど性の多様性についてどのように思春期の子どもたちに伝えていくのか、生徒からはどのような反応があるのかなどご報告して頂きます。さらに、教員向けの研修も行っており、教職員から集めたアンケート調査の結果についてもご報告下さいます。
また、津田さんは伝統的な性のあり方や、異性愛を前提とした家族の在り方に囚われている助産師に対しても、積極的にLGBTQやセクシュアリティに関する勉強会を開催し、業界内での啓発も積極的に行っています。
さらに、津田さんが主宰するLGBTQ当事者やその支援者が気軽に集まることができる場「レインボーカフェ岸和田」では、毎回多くの人が立ち寄り、新たな出会いがあり、ネットワークが広がっていっています。参加者のインタビューをご覧ください。
パワフルな行動力、命の現場を経験してきた包容力で、医療や福祉に不安を抱えたLGBTQに寄り添う姿勢は、当事者にとって「心強い」の一言に尽きます。津田さんが巻き込む助産師さんをはじめとした、エネルギッシュな支援者ネットワークとLGBTQコミュニティの更なるつながり作りに期待しています。
■津田さん主催の集まり
レインボーカフェin岸和田
第4土曜10~17時 @岸和田市男女共同参画センター
平日18~21時(不定期・月1回) @岸和田市社会福祉協議会
【メッセージ】
地域コミュニティの中で母子を支援している助産師の立場から、多岐にわたる活動が可能であることを明らかにするご報告は、地域づくりのコーディネーター、保健医療関係者に是非参考にして頂きたいです。マイノリティの声をしっかり聴き、マジョリティを巻き込み動かし変えていく、という最も道理にかなった実践に説得力を感じる方が多いはずです。LGBTQ当事者を支えるサポーターをどのように増やしていくかも参考にして頂きたいです。
【この分科会を観る人に断然おススメ!】1/9(土)10:30~12:00
レズビアン・バイセクシュアル女性の健康~医療者に知っておいてほしいこと・当事者が知っておくとよいこと
もに併せてご参加ください。
この分科会を作りにあたり「にじいろかぞく」様と、LGBTQな妊娠出産経験者の方より、体験談の情報提供をいただきました。ありがとうございました。