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LGBTQ+とスポーツ

2月4日(土)16:30~18:00(~18:40交流会)

録画上映+ライブQ&A

井谷聡子(いたに さとこ)関西大学文学部准教授

単独チケット1000円
フリーパス5000円

スポーツから排除されがちなLGBTQ

体育の授業は好きでしたか?今、運動習慣を持っていますか?運動することでなまった体をほぐしたりリフレッシュしたり、趣味として野外活動やスポーツに取り組むことは、多くの人にとって人生を豊かに生きていく上で重要なものです。しかし、LGBTQ+の人々は、そういった場においても排除されがちです。海外の研究には、LGBTQ+の大人はシスジェンダー・ヘテロセクシュアルの人に比べて運動習慣を持っている人が少ないことや、運動機会からの疎外による健康格差を指摘するものもあります。一方で、先のオリンピックでは、過去最多の約250人のアスリートがLGBTQ+であることをカミングアウトして出場しました。LGBTQ+の人たちにとって、男女二元論、女性蔑視、異性愛中心主義が色濃く反映されるスポーツとは、どのような場なのでしょうか。また、「生物学的性別」を問われるスポーツの場でトランスジェンダーの人々をどのように考えたら良いのでしょうか。スポーツとジェンダーが専門の井谷聡子さんにお話頂きます。

井谷聡子(いたに さとこ)関西大学文学部准教授

カナダのトロント大学博士課程修了。関西大学文学部英米文化専修で北米の身体文化とジェンダー、セクシュアリティに関する授業を担当しています。現在は、スポーツにおける多様な性をめぐる問題や、オリンピックがもたらす社会問題、そして体育におけるLGBTの生徒の経験や、体育嫌いになる生徒たちの経験について研究しています。

主著『〈体育会系女子〉のポリティクス―身体・ジェンダー・セクシュアリティ』(2021、関西大学出版)、『オリンピックという名の虚構』(ヘレン・レンスキー著、監訳、晃洋書房、2021年)、『オリンピック―反対する側の論理』(ジュールズ・ボイコフ著、監訳、作品社、2021年)
主論文 「男女の境界とスポーツ―規範・監視・消滅をめぐるボディ・ポリティクス」『思想』2020年第4号(156-175, 2020年)ほか

関連資料

エトセトラ Vol.6 特集スポーツとジェンダー』(2021年、etc.books)
日本スポーツとジェンダー学会
PEGP科研プロジェクト『体育・スポーツのジェンダー・セクシュアリティのポリティクス』

名古屋大学の国際シンポジウム「ケアの倫理と人文学」 (2023/1/28・29)登壇「トランス・アスリートとケアの倫理の交差点」というテーマで講演予定。

セクマイ実行委員の押し!資料

井谷さん所属のPEGP研究プロジェクト制作のリーフレットが、良い!

 

体育・スポーツのジェンダー・セクシュアリティのポリティクス
ー「誰も置き去りにしない体育」をめざしてー

 

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​こんな方におすすめ!

体育の先生はもちろん、あらゆることが男女別になっている学校現場に従事している方々にも「性別とは何なのか」を問い直す機会として是非ご覧頂きたい分科会です。「体育は男女別が当たり前」という考えが変わるかもしれません。また、健康格差の解消を目指す医療者の方々にも「social determinants of health」(健康を決定する社会的要因)を理解する上でのヒントを得て頂ければと思います。華やかに見えるスポーツ界で、LGBTQ+の当事者であるということ。改めて考えることで、これまでよりもっともっと選手へエールを送りたくなること間違いなし。

(実行委員:塩安)

【報告文】

 LGBTQのアスリートたちが活躍するようになってきたのは本当に最近のことで、これまでそして現在もLGBTQにとってスポーツは敷居が高く感じられ、現に体育が嫌いだったLGBTQは多く存在する。その状況について学ぶべく「LGBTQ+とスポーツ」と題して井谷さんにご講義頂いた。
まず、スポーツという文化の中でアスリートが求められるのは、強さや逞しさ、冷静さやリーダーシップなど、いわゆる軒並み「男らしい」とされている特徴で、それとは対称的な特徴、弱くやさしく、感情的で従属的というのはまさに「女らしさ」とされている。この非対称的で男尊女卑・異性愛中心である性別二元制がスポーツの基盤であることがそもそも女性やLGBTQに排他的である原因であることをわかりやすくご説明くださった。「男らしくない男」としてのゲイへの差別、女らしくない女性アスリートがレズビアンと思われたくないために執拗に異性愛であることをアピールするなど、同性愛嫌悪の温床でもあった。

 そのような背景の中で、ゲイ・ゲームスなど当事者によるスポーツイベントや組織が立ち上がっていったことで、多くの当事者アスリートがエンパワメントされスポーツ界でのカミングアウトが少しずつ広がっていった。具体的に選手を紹介してくださり、多くのトップアスリートがカミングアウトして活躍していることを知ることができた。LGBTQ+のアスリートの中でも、トランスジェンダー女性の選手たちは常に批判にさらされてきた。テストステロンが及ぼす影響はマイナスの場合もあり、様々な運動能力(持久力、スピード、最大筋力、爆発的筋力、機敏性、相対筋力など)を総合的にみると「テストステロン値が高いこと=強い」という短絡的な発想自体が間違っている、というお話はストンと腑に落ちた。ICOや大きなスポーツ連盟の出場規定を整理してご紹介いただいたり、さらにはスポーツのフェアネスという考え方、そしてそもそもフェアではない前提でスポーツが行われているという現実も非常に説得力があった。

 競技スポーツをしている人は一握りで、大半の人々は楽しむためにスポーツをしている。ならば、プロアスリートの競技組織のルールを参考にする必要はなく、それぞれが楽しくできるようなルールにすること、それぞれの人権が尊重されていることに留意することが重要ではないかという提案もあった。スポーツをLGBTQインクルーシブにしていくための具体的な工夫もたくさん提示してくださり、すぐに実践できそうなことをたくさん教えてくださった。
 最後に、井谷さんの研究プロジェクトである体育嫌いについてのリーフレットの紹介をして頂き、締めくくった。

【参加者の感想】

- まさにオリンピックで排除された者です。セックスワーカーです。オリンピックを反対するアスリートの方がいて嬉しかったです。

- このような講演をずっと拝聴したいと思っておりました。私はシス男性ですが、体育の授業から受ける抑圧の理由を軍隊の教練の延長だと考えており、本当に体育が嫌いでした。単にそれだけでなく、バイナリー思考のせいだと改めて分かり、考えを整理できました。

- レズビアン、ゲイ、トランスジェンダーで障壁が異なること。その背景が理解できた。また、オリンピック開催でLGBTQの理解促進に役立つかという点について井谷氏のお考えに触れて、自分中で漠然としていたところが整理できてきた。それらの点で有意義でした。

- 交流会で他の参加者の方のお話を聞けたり自分の意見を言えたりしたのが、とても良かったです。安心して話せたというのが、有り難ったです。

- なんで「体育」は男女で分けられてきたのだろう?とあらためて思いました。むかしは「家庭科/技術」なんかも分けられてましたが、変わってきた。「体育」も変わっていくのかなと思いました。井谷さんの本や論文は読んだことがなく、紹介された本は読んでみたいと思います。

- 運動が好きではなかったが、学校で教えられる運動が、もっと楽しんでやれるものだったらなと改めて感じた。また、トランス女性のスポーツ参入には議員さんやマスコミ関係の人からも否定的な意見を伝えられることが多いので、後でまたアーカイブを見るなどしてしっかり伝えられるようにしていきたい。

 
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