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保育園は性の多様性をどのように捉えてきたか
-性的マイノリティ保育者の実践に着目してー

2月4日(土)10:30~12:00​(~12:40交流会)

​録画上映+ライブQ&A

天野諭(あまの さとる)「にじいろ保育の会」代表

単独チケット1000円
フリーパス5000円

LGBTQ当事者であり保育者でもある立場から

小学校を皮切りに、中学高校と男女平等教育や性教育の実践は広く行われていますが、小学校に入学する時点で、なぜか既に固定的なジェンダー観を持っている子どもたちが多くいます。就学前の保育では、どのように性や性の多様性が捉えられてきたのでしょうか。女の子はピンク、男の子は青、といったジェンダーステレオタイプ的な保育からの脱却が図られる一方で、幼児の「性」についてタブー視される風潮はあまり変化がありません。そんな中、2021年に性別違和のある子どもへのいじめ問題が浮上しました。LGBTQの子どもたちのみならず、すべての子どもたちが性別に縛られることなく、自分らしくのびのび育つためには、どうすれば良いのでしょうか。LGBTQ当事者かつ保育者たちの実践的な視点も分析に含めながら、保育が抱えるジェンダー問題について解説します。
多様性を考える保育士研究会「にじいろ保育の会」代表の天野諭さんをお招きし、保育現場の実態と性別にとらわれない保育の実践について、お話頂きます。

天野諭(あまのさとる)

立命館大学人間科学研究科博士後期課程在籍
保育士養成校非常勤講師
保育士・幼稚園教諭専修免許

にじいろ保育の会」代表

​こんな方におすすめ!

教育関係者はもちろん、子育て中の方、講演業の当事者、LGBTQコミュニティ関係者などにおすすめ!ジェンダーニュートラルなデザイン・表象に興味がある方も必見!
喜び勇んでお遊戯会の題目「犬のおまわりさん」を選んだら、ミニスカートの婦人警官の格好をさせられたショックが忘れられない!皆さんの幼稚園・保育園での思い出は?LGBTQの苦悩が早くもはじまる幼児期に、どんな状態に置かれていたのかを今、大人として改めて俯瞰することで、ジェンダーの原体験に自覚的になれるかもしれません。これは何もLGBTQだけの話ではなく、この大性差別社会に暮らすすべての人の生きづらさにつながる話です。人生のはじまりを変えていくこと。巨大な可能性を持っている分野だと思いませんか。(実行委員:塩安)

【報告文】

 小中高で性教育や性の多様性の教育の必要性が叫ばれる昨今、幼児教育での実践はあまり聞かれない。そこで「保育園は性の多様性を どのように捉えてきたか」と題して天野諭さんにご講義頂いた。まず、幼児教育の中でジェンダーやセクシュアリティが取り扱われてこなかった背景として、制服などのわかりやすい実践や子どもたちからのフィードバックが得られにくいことや、保育者自身のステレオタイプな子ども像や「幼児にはまだ早い」と言った価値観が取り組みを阻んできたことが紹介された。また、「子どもの人権」が重視される中で、ジェンダーやセクシュアリティが下位概念として軽視され、放置されるのは本末転倒であるという重要な指摘もあった。そして、現場でどのようなジェンダー化が見られるのか、実際にトイレや着替えなどの男女別をどのように考え、運用していくのが良いのか問題提起がなされた。

 中でも、プレイベートパーツを隠すための仕切りが、より性器が見えやすい小便器には設置されない点は、身体に付与される意味や保護すべきとされるものが男女で異なるのではないか、という指摘はすべての人への重要な問題提起であると感じた。

 近年起きた保育施設でのトランスジェンダーの子どもへのいじめ事件にもみられるように、すでに幼児期からLGBTQの子どもたちは存在しており、対応が必要な状態であるが、制度や施策が不十分であることも指摘された。保育所保育指針には、保育者が性別ステレオタイプを助長しないようにと言及があるものの、子どもたち同士のやり取りには効力がない。保育という業種自体のジェンダーバランスの悪さ、様々な行事でも顕著である、ジェンダーステレオタイプを助長する隠れたカリキュラムも、改善の余地がある。

 天野さんがクラウドファンディングを活用して行った『ジェンダーニュートラル・個人マークシール』の実践の報告もあった。「ジェンダーニュートラル」という言葉が持つ難しさを感じつつ、批判にも耳を傾けながら取り組みを考察されていた。また、代表を務める「にじいろ保育の会」でのLGBTQ当事者の保育者に対する調査では、カムアウトしにくい職場で、様々なバランスを取りながら個々が実践を行っている姿が伝えられ、大変興味深かった。

 質問も多く寄せられ、参加者の関心の高さがうかがえた。すべての質問にお答え頂く時間がなかったが、大変有意義な分科会となった。最後に、昨今問題となっている保育者からの虐待について、論考を出されている件について言及して頂いた。(報告文:塩安)

【参考】
論座「保育士はなぜ虐待をしてしまうのか?~保育士・研究者による体験的考察」


【参加者からの感想】

- 勉強したいと思っていた内容を詳しく知ることができてよかった。

- 「保育」の分科会は、思っていた以上によかったです。研究文献で知人の名が出てきたので、アーカイブが見られるからフリーパスぜひとメールしました。ブレイクアウトルームは初めてで、どうしていいのか難しかった。ブレイクアウトルームにチャットが使えるといいなと思いました。

- 保育の現場の現状を知れて、今後の仕事の参考になった。

- 大人のジェンダーに対する意識、考え方が子どもに大きく影響を与えるため、子どもと関わる大人への啓発の重要性は、非常に共感する。

- 口先だけで語られる「子どもの権利」という言葉の胡散臭さが分かってホッとしました。大人の子ども観を批判的に見なければ始まりません。

- 友人の子が幼稚園に通っていたころ、「これはお父さん、これはお母さん」と、それぞれ青の積み木、赤の積み木を持ってきたときに、「この年齢から男の人は青、女の人は赤と刷り込みがされているのだ」と思いました。偏見を育てないように自分自身は気を付けているつもりですが、1歳になる甥っ子に妹が「男の子なんだからかわいいじゃなくかっこいいだよ」「男の子におままごとはない」等と言っているのを聞くたびに、都度「かわいいもかっこいいもどっちでも良いよね」とか「男の子用のおままごとセットも売ってるし、好きなことやれたら良いよね」と返していますが、このやり取りがしんどいです。この分科会を通じて大人こそが自分の価値観と向き合う事の大切さを改めて学ぶことができましたし、「皆違って皆良い」が、時にその人の抱える問題をないことにしてしまう危うさを、もっとしっかり伝えたいと思いました。

- アーカイブで視聴しました。具体的な実践についてもとても勉強になったのですが、質疑応答での絵本についての考え方は、天野さん、塩安さんのやりとりにそれぞれとても学びがありました。難しい問題でもあるのですが、多様なあり方を子どもたちに提示していくことの必要性と同時に、安易にツールを使ってしまうことの問題もあり、同時に考えていく必要があるのは大きな学びでした。

 
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