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【登壇者】
梨谷美帆(臨床心理士・公認心理師)、きのコ(文筆家)

【開催形式】LIVE配信+Q&A

【内容紹介】
「ポリアモリー(polyamoly)」という言葉をご存知でしょうか?「複数愛」と訳されることが多いですが「親密で継続的な複数のパートナーシップを関係者の同意のもとに構築していく」というノンモノガマス(非単数愛/単数婚)なライフスタイルのひとつです。現状、パートナーシップ関係のそのもの指向性を指している場合もあり、また「複数愛指向」を自身のアイデンティティとして位置付ける方もいます。
 日本社会で暮らす多くの人はモノガミー(単数愛/単数婚)を前提とする価値観を内面化しています。例えば「恋愛は一対一で行われるのもの」というような価値観です。その背景には「恋愛・セックス・結婚の三つは一体である」というような観念も強く、複数愛的な行為は「あってはならないこと」「社会的なルールを乱すもの」としてみなされがちです。そのような中でポリアモリー当事者たちも、「浮気者」「不倫」「セックス依存」という言葉を投げかけられた体験を持つ人も多く、ポリファミリーで育てられる子どもたちに向けて「かわいそう」「親のエゴで振り回されている」というような評価をする声もあります。
 しかし、そのような言葉は、ポリアモリー当事者の実際の日常や、複数のパートナーシップを育み構築していく当事者の誠実な努力やそれぞれの工夫について知られていないことがひとつの要因でしょう。


 本分科会では、ポリアモリーにまつわることの基礎知識やポリアモリー当事者から寄せられた動画をご紹介し、ポリアモリー当事者からのコメントを交えながらパートナーシップの多様な関係性指向や健康で安全なパートナーシップの構築についてみなさんと考えていきたいと思います。
 医療・福祉の領域のサービスはパートナーシップや家族の多様性に向けて開かれようとしています。その多様性の観点のひとつとして「ポリアモリー」について考えてみましょう。

 

【メッセージ】
恋愛や性愛に絡んでいない場面、例えば家族・きょうだい・職場のチームなどで「複数のパートナシップ」を営むということは、恋愛場面以外では私たちはごくあたりまえに行っています。「ポリアモリー」について考えてみることは、モノガミーの指向の方たちにも「パートナーシップ」について改めて考える有効な視点ともなると思います。「そんな言葉知らなかった」「当事者と会ったことがない」という方も気軽にご参加ください。

報告

 本分科会では、臨床心理士/公認心理師の梨谷美帆様と文筆家のきのコ様にご登壇頂いた。

 現在、「恋愛は男女間/一対一で行われる」あるいは「子育ては男女一対の親で行われ、親は子の生物学的な親である」等の思い込みが一般的である。しかし実際は多様な恋愛・パートナーシップ・家族が営まれており、今回はポリアモリー(Poly(複数)+Amor(愛)。「責任ある非一夫一妻制」の一つ)という概念を中心に、それらの思い込みを解きほぐすことを目的とした。

 

 前半は、当事者の動画として「一対一の男女カップル」よりも広い形で親密な関係を築く当事者たちの3本の動画を放送した。

  • ポリガミーカップルのAさんとBさん:2人の現在の関係やそれを築いた経緯、関係維持のためのルールや心がけ、パートナー同士の関係、親族へのカミングアウトのタイミング等の、実践の内容と工夫。

  • 2人のパートナーがいるポリアモリー当事者でコミュニティ子育てを志すCさん:現在に至る経緯やパートナー達との関係、保護者を血縁やパートナーシップに限定しないコミュニティ子育てを指向する理由等。

  • 自身と彼女と同居人と、それぞれが精神疾患を持つ3人で”生活共同体”として暮らすDさん:現在の暮らしぶりやそのメリット、生活上での工夫、恋愛や関係性で大事にしていること等。

3本の動画では、ポリアモリー/ノンモノガミー的といっても三者三様の関係を築いていることがわかり、また広く情緒的な結びつき・親密な関係を築く事とその維持についての工夫や秘訣が含まれていた。また、Cさん、Dさんの二人ともが「無意識で”当たり前”を前提にした対応をされることのしんどさ」を口にした。

 

後半では、様々な関係に関する用語の説明や、当事者グループでよく話題になること、が説明されたのち、質疑応答へと移った。

参加者からの質問への回答として、きのコ様からは生まれ育った家族へのカムアウトのコツや対話を重ねることの重要性が語られた。また、「子どもへのカミングアウト」という質問に対しては、梨谷様からは「自分に合うスタイルを選ぶことの重要。子どもには説明はするけど押し付けないこと」、また動画で登場したCさんにも急遽ご登壇頂き、「周りと違うことに気づいたときにどう言ってあげられるか考えている。カミングアウト済みの家族に相談して方向性を決めるつもりである」等の回答をいただいた。

全体を通じて、「コミュニケーションやルール整備、互いに配慮しあうことの重要性」うや「複数人で関係を築くときは対等な話し合いが重要であり、自分の気持ちに気づいて上手に言葉にする対話スキルを磨くことが大切」ということが浮かび上がった。

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