弁護士 森あい
白鷺病院ソーシャルワーカー
藤田譲(ふじたじょう)
報告文
医療機関において同性パートーなどセクシュアルマイノリティが、大切な人と一緒にいられる状況を作るために、参加者も含め知恵を出し合い、経験を共有しあい、できることを考えた分科会でした。
はじめに弁護士の森あいさん(結婚の自由をすべての人に訴訟・九州弁護団)からは、a法的な観点を中心に状況の整理がなされました。その後、医療現場からは医療ソーシャルワーカーの藤田譲さんからお話いただきました。
森あいさんからは、知り、考え、変えていくという話がなされました。
まず、「法律上の家族でないとダメ」という法律はありません。しかし、医療機関、また、同じ医療機関でも対応する人によって、実際の対応は様々です。また、親族がいるか、近くにいるのか、遠くにいるのか、親族は両親など近い間柄の親族か、カミングアウトしているのか、どの程度しているのかなどによっても医療機関の対応は変わってきます。医療機関の啓発が必要です。啓発について、行政ができることの一例として、医療従事者向け性的マイノリティサポートハンドブック(熊本市)を紹介します。
さて、特に問題となるのは、本人が意思を示せないときです。本人の意思を示す準備をしておく必要があります。
医療現場で問題になるのは、主に3つの場面です。病状の説明、家族以外面会謝絶、医療行為の同意です。医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンスでは、意識不明の患者の病状や重度の認知症の高齢者の状況を家族等に説明する場合は、家族「等」に確認するとされ、法的な家族に限定していません。けれど、法律上の家族が出てきたとき、医療機関は板挟みとなり、対応が難しくなってきます。そう考えれば、本人の意思を示す準備、医療機関の啓発の他に、法的制度も必要です。同性同士の婚姻の制度化も自分たちを守るための手段になります。
次に、藤田譲さんから医療側の懸念や大切な人の側にいるために助けになる手段を提示いただきました。医療では、患者本人の意向に沿うことを大切にしようという流れが起きているので、血縁や婚姻関係の有無・性別に関係なく、病院側は本人の意思に応じてくれるはずです 。しかし、一方では、医療現場にでは、悩ましい問題があり、その代表が「なりすまし」で、例えば、親戚や知り合いのふりをして連絡先を聞き出そうとしてくる人などもいます。ひとつ間違うと個人情報漏洩につながるので慎重になってしまいます。ではどうしたら良いのか、病院として一番ありがたいのは、患者さんご自身が、あらかじめ事情を伝えてくれることで、病院側に落ち着いて考える時間をいただければ助かるとのことでした。また「思いを形に」してあると良い(例えば緊急連絡先カード)ことも話されました。患者としては「病院の誰が頼れるか?」を見極めるのも方法です。またカミングアウトも方法の一つ。それは、不安や心配もあるとは思うことが添えられました。ソーシャルワーカーの倫理綱領では、ソーシャルワーカーは、すべての人々を、出自、人種、民族、国籍、性別、性自認、性的指向、年齢、身体的精神的状況、宗教的文化的背景、社会的地位、経済状況などの違いにかかわらず、かけがえのない存在として尊重するとあります。ここ10年で性自認、性的指向に関する認識は変化しており、大阪医療ソーシャルワーカー協会でも、3年前から新人対象の研修で「性の多様性」について学んでもらっていることが伝えられました。
後半のクロストークでは、藤田さんから、通常の診療の中ややりとりの中でセクシュアルマイノリティの方の話題が出てくるようになったことが語られました。あまり関心がなさそうな医療機関にも考えてもらうようにするにはどのようにしたら良いかなども話されました。視聴者からも多く質問が寄せられ、医療従事者からの質問もあり、関心を持っていることが伺えました。
パートナーのみならず、単身者など、本人の大切な人と寄り添えるように今後も問題提起していきます。
※セクシュアルマイノリティ関連の相談窓口、特に、法律相談は電話相談や受付が電話の場合がほとんどで、聴覚障害がある方などが相談できる窓口が乏しいことも共有されました。整備が必要です。
アンケート(一部抜粋)
最初なぜ森弁護士が医療の問題で発表されるのかと思っていましたが、突き詰めると法律問題であるということがよくわかりました。
法的な家族ではない「大切な人」と寄り添うことを、病院側の諸事情がありつつもなんとか実現させていこうという考えをもったソーシャルワーカーが演者であるとよかった。
【登壇者】
森あい(弁護士 ) 藤田譲(白鷺病院ソーシャルワーカー)
【開催形式】LIVE配信+Q&A
医療機関において、同性パートナーなどのセクシュアルマイノリティのパートナーが、家族として扱ってもらえず、病状の説明をきけなかった、ICUには入れないと言われたという声をよくききます。一方で、家族として扱ってもらえたという声も聞きます。このように医療機関においてセクシュアルマイノリティのパートナーがどのような扱いを受けるかは不安定です。けれど、大切な人に寄り添いたいのは、異性でも同性であっても同じではないでしょうか。
また、本来、家族であるからといって本人の病状を本人の希望なくつたえてよいわけではありません。
この分科会では、ご本人さんの意思が尊重される医療とはどのようなものなのか、パートナーへの対応は現状どのようなものか、法的な観点から弁護士森あいさん、医療現場から医療ソーシャルワーカーの藤田譲さんからお話しいただきます。
どのようなことができるのか、考えましょう。ぜひご参加ください。
【メッセージ】
「病気や事故で大変な時に、大切な人にそばにいて欲しい。そばにいたい」
その大切な人が法的な家族でなければならない、という法律はありません。
しかし、「法的な親族でなくても問題なかった」という声を聞く一方、「そばにいられなかった」、「疎遠でも、とにかく血縁の人を連れて来るように言われた」といった声も聞きます。
どう工夫ができるのか、皆さんのお話も聞きながら一緒に考えたい。ご参加お待ちしています!
(森あい)
病気の時はささいなことでも心配になるもの。
そんな時に、「いつもの人」が傍に居てくれると心強いですよね。
誰もが願う当然の思い。
医療の現場に横たわる「その思いを拒むもの」を皆さんと共有しながら、
当然の思いが叶えられる道筋を一緒に考えられたら・・・と思います!
(藤田譲)